生徒主導のカリキュラム編成
同校の単位制の顕著な特色は、「科目履修の決定権は生徒にある」という原則に極めて忠実な点である。詳細な履修モデルを事前に設定し、1年次のうちに3年間の履修モデルを決めている高校もあるようだが、同校の場合は、1、2年各2学期に、それぞれ2年次、3年次のカリキュラムを、生徒が自分自身で決定する。その際には、教師と生徒の1対1の面談が極めて重視されているという。教務部長の塩川哲也先生は次のように説明する。
「履修科目を決定するに当たっては、まず学年集会を持ち、全体説明を行った後、各クラス担任がHRなどで簡単な説明を行います。その際、各科目の簡単な概要を記したシラバスを配りますが、その後は特に細かな指導などは行いません。その代わり『分からないことがあったら何でも聞きに来なさい』という姿勢を明確に示すことで、生徒が自分で進路学習を始めるよう促すのです。自分の手で情報を集め、自ら進路意識を高めていくことこそ大切なのですから、事前資料などはできるだけ『不親切』に作成し、教師と生徒が話し合う中で進路意識を養います」
また、自主性を尊重するという同校の姿勢は、3年次に4単位まで認めている空き時間を「主体的自習の時間」と位置付けていることにも表われている。
「『自習』の時間は、学校で学ぶ以上のことを、生徒が自発的に学べるよう設定しました。教師としては、授業を受けるだけでなく、自ら『自習』の時間を使って、主体的な学習をする生徒が増えてくれれば、という思いもあるのです」(塩川先生)
もちろん、同校の教師たちも生徒がすぐにそうした自主性を身に付けられるとは考えていない。そこで1年次はすべて必修科目とし、2年、3年と学年が上がるに従って選択科目の割合が多くなるようカリキュラム上の配慮がなされている(資料5)。また、きめ細かな生徒把握をバックアップするため、生徒の履修科目や模試成績などをデータベース化するなど、生徒の情報をすべての教師が共有できるようなシステムづくりも進められている。
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