VIEW21 2002.9  指導変革の軌跡 滋賀県立水口東高校

 「本校では1、2年生にはあまり多くの補習は行っておらず、クラブ活動を重視してきました。進路を考え出すのも受験勉強を始めるのも、すべて3年生になってからになりがちでした」(北川浩司先生)
 文武両道を教育目標に掲げる同校。2年生までは部活に打ち込み、受験を意識するのは3年生になってからという流れが、5、6年前までは定番になっていた。
 しかし、このサイクルだと大学受験まで1年もない中で、生徒は自分の進路を決め、入試のシステムを理解し、受験勉強に取り組まなければならない。その結果、「『大学に入って何を勉強したいのか』を真剣に考えることのないまま、ただ合格を目指して受験勉強に打ち込む生徒が多かった」と北川先生は語る。
 「結局、出口指導になっていたのだと思います。それでも5、6年前までは大学入試の競争率も高く、生徒の勉強へのモチベーションは保たれていました。しかし、大学の全入時代が近づいて来るにつれて、生徒の勉強に対するモチベーションをキープするのが段々難しくなってきたのです」(北川先生)
 将来どんな職業に就きたいか、その職業に就くためには、大学でどんな勉強をするべきか――。
 「将来への展望を、もっと早い時点で生徒に描かせることが大事なのではないかと感じるようになっていました」(北川先生)
 北川先生と同じく当時の様子を知る辻田浩先生は「生徒には、低学年からクラブ活動と勉強をどう両立させていくか、職業研究や学部・学科研究をどのタイミングでするのかをきちんと伝えることが必要だと考えました。3年間を見通してのしっかりとした『時間管理』を実践する必要性が出てきたのです」と語る。
 低学年からの進路指導を始めるに当たり、どのような指導をどのタイミングで実施するのか、学校行事と学習指導のバランスはどう取っていくのか……。進路指導に今まで以上に時間をかけることによって、逆に授業の準備にかける時間や生徒との面談の時間がおろそかになっては本末転倒だ。北川先生をはじめ、同校の教師たちの間で「3年間での体系立った指導計画を立てよう」という思いが固まった。そして、議論を重ね、その計画が形になってきたのが5年前のことだった。

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面談は、極力職員室で行うことにしている同校。これにより、教師ごとに違った指導を行うのではなく、全校一丸となって、一人ひとりの生徒の進路指導を共有することができる。



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