VIEW21 2002.9  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

 大学がAO入試を実施する背景には、受験生の目的意識や、その学部・学科で学ぶ上での能力・適性を的確に見極めたいというねらいがある。時間をかけた丁寧な書類審査や面接が行われるのもそのためだ。00年度より全学部・学科でAO入試を実施している東北学院大の入試部長・林伸太郎教授も次のように語る。
 「一般入試ではペーパーテストの点数が高い順に合格者を選抜していくわけですから、必ずしもその学部・学科で学ぶのに向いた受験生のみが合格するわけではありません。一方、AO入試では、受験生の学部・学科への適合度を重視します。面接を担当する先生には、自分のゼミに入ってきたら教えがいがあると思えるような生徒を選んでください、と話しています」
 学部・学科への適合度の中には、当然基礎学力も含まれる。同大学では特に出願に当たって評定平均値などの条件は設けていないが、「推薦入試でも出願できるレベルの学力は求めている」(林教授)という。基礎学力があるのを前提として、それに加えて学部・学科への適性や受験生の目的意識を見るのが同大学のAO入試というわけだ。
 大学がAO入試を通じて求める人材をねらい通りに獲得するためには、どのような能力や適性、目的意識を持った学生が欲しいのかを、募集する時に受験生や高校現場に伝える必要がある。そこでAO入試で重視されているのがアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)の明示だ。東北学院大では、受験志望者向けに配られる『受験ガイド』の中で「AO入試における重要評価点」を学科・専攻別に示している。例えば、法学部法律学科は「本や新聞などを通して、社会への高い関心と豊かな知識を持ち社会的問題を論理的かつ多面的に考えることができること」など四つの重要評価点を挙げている。一般入試では、大学や学部・学科がどんな人材を求めているかを入試科目からうかがい知るのは難しい。それに対してAO入試は、大学が求める人材像を受験生に向け明確に提示したメッセージ性を持つ入試なのだ。
 「AO入試にチャレンジする生徒のほとんどは、本学のアドミッション・ポリシーを理解した上で、だからこそうちで学びたいという目的意識を持った子どもたちです。またそういう生徒でないと合格できません。近年、高大接続が大きなテーマになっていますが、高校から大学への進路不適応をなくすという点でも、AO入試は有効だと思います」(林教授)
 高校現場としては、各大学のアドミッション・ポリシーを知ることは、一般入試や推薦入試での受験を考えている生徒の進路指導にも役に立つ。AO入試が普及する中で、求める人材像を明確にする大学が増えているとすれば、それは歓迎すべきことであると言えよう。

年間30校を超える高校を訪問
教官も母校で説明会実施(東北大)

 AO入試を導入した大学の中には、高校との接触の機会を以前よりも増やす努力をしているところが少なくない。筑波大や九州大と並んで、国立大としては全国でも最も早い00年度からAO入試を実施している東北大もその一つだ。東北大アドミッションセンターの鈴木敏明教授は、「本学のアドミッション・ポリシーをどのようにして高校の先生方に説明するか。それがAO入試をスタートさせてからの一番のテーマだったと言っていいですね」と話す。
 「アドミッションセンターでは、各県で入試説明会を開催する他、年間30校を超える高校を個別に訪問して、東北大のAO入試の趣旨や特徴を説明しています。また我々とは別に、工学部の教官も夏休みに母校を訪ねて、先生方や生徒たちに大学や学部に関する説明を行っています」
 東北大がAO入試を導入した背景には、将来研究者や高度専門職業人として活躍できる優秀な人材を、少しでも多く獲得したいというねらいがあるためだ。同大学のAO入試は、受験生の「学力」を特に重視している点で特徴的だ。センター試験を課さないAO入試Ⅱ期の出願条件は、評定平均値4.3以上(工学部では、数学と理科の評定平均が4.5以上、全体で4.0以上の生徒でも出願可)とかなり厳しい。小論文試験では、工学的なテーマの英文のエッセーを読ませて作文を書かせたり、数学や物理、化学に関する論述問題が出題されるなど、高校までの履修内容をしっかりと理解していないと対応できないような内容となっている。さらに面接では、専門分野に関係する問題を受験生に投げかけ、教授がアドバイスをしながら、その場で解かせるといったことも行っている。こうした選抜方法によって、大学での勉強に対応できる基礎学力と、研究者や高度専門職業人として必要な学問への適応度、意欲の両面を測ろうというわけだ。東北大アドミッションセンターの夏目達也教授も次のように語る。
 「アドミッション・ポリシーやAO入試の実施形態は、大学によってそれぞれ異なります。だからこそ、本学が求める学生像とAO入試の特徴を説明するために、高校の先生方にお会いする機会を数多く設ける必要があるわけです。我々はAO入試を通じて、将来東北大を担っていけるような優秀な人材を確保し、責任を持って育てていきたいのだということを、時間をかけて説明しています」


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