VIEW21 2002.9  特集 学校改革のビジョンづくりに向けて

 このような知見に基づいて整理したものが、下のPDCA活動のフローチャート(資料4)である。

PDCA活動のフローチャート

 「教育方針」は、それぞれの学校の伝統を踏まえたものであるが、「当面する教育課題の焦点化」―言い換えると、教育活動全般に渡る自己点検・調査活動(Research)の結果として抽出された解決課題にプライオリティを付け年次計画に位置付ける―をも踏まえたものであり、管理職の描く学校の将来展望や教育に対する思いを反映したものとして「計画(目標の設定)」が導き出される。
 「計画」は当然のことだが教育活動全般に渡り、多くの高校では次の10領域に「場合分け」されている。
○1.教科学習
○2.生徒指導 3.特別活動
○4.進路指導
○5.人権尊重教育 6.道徳教育 7.安全健康教育
○8.施設・設備管理 9.危機管理
○10.総合的な学習の時間
 これまでの校務分掌(教育活動のための組織)をかなり強く反映したものとなっているが、課題設定や自己評価のための調査活動は、これら10領域を横断することが多いので「自己評価(診断)委員会」といったプロジェクト方式や教育研究部(校務分掌の一つだが、横断型)が担うといった方法で推進されている。
 自己点検・自己評価は、本来自ら設定した目標(Plan)を達成するため自ら実践(Do)し、自ら評価することであるから個人の欲求と組織の要請との統合が必要であり、そのため「計画」立案の段階で全教職員の参画(コミット)が必須の要件となる。岡山朝日高校(岡山県)では各学年が到達目標を掲げ、春と秋の年2回、達成状況をプレゼンテーションする形でコミットの場を準備している。このような実践事例は、教育目標の共通言語化を図る上で有効な手法として機能している。
 このようなグループによる自己点検・自己評価の報告会で教育課題の達成度を検証し、「未達」の要因を整理することが、討議の展開そのものであり、教職員が経営資源として自己変革を遂げ「次期目標」が設定される。

図

リサーチ活動に学ぶ

 教育計画は各種データの収集と分析に基づいて策定され、全教職員の参加を前提に教育活動レベルにブレイクダウンされる。データは計測可能で定量化し得る項目から始めるのが一般的で、次のような分析指標が採られている。
1 生徒の属性に関する指標
 ・年齢・性別、出身校(中学校別の学習内容)など
2 教育課程に関する指標
 ・選択科目と履修率、修得単位数、授業実時間数など
3 学業成績等に関する指標
 ・進級率、転退学率、出席率、卒業後の状況、進学・就職率、学力到達度など
4 学校運営に関する指標
 ・習熟度・進路志望・グループ別学習の規模、「総合的な学習の時間」の内容と成果、保護者会・講演会などへの参加率など
 ・教職員の年齢・性別、担当教科、校務分掌、教育研修への参加状況、教師の課題認知レベルなど
 ・生徒の宅習の実態など学習・生活行動特性および人間的成長度、生徒・保護者・卒業生の学校満足度レベルなど
5 社会環境に関する指標
 ・就業・失業率、進学率、経済成長率、国民意識の変化など


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