VIEW21 2002.9  特集 学校改革のビジョンづくりに向けて

ドリカムプランを支える評価プロセス

 体系的な進路学習を行うことにより、生徒の学ぶ意欲の向上を図る――。城南高校が94年度から実施しているドリカムプランは、このコンセプトを全国に先駆けて具体化した取り組みの一つである。その取り組み内容については本誌(95年9月号、98年5月号)をはじめとして多くの紹介例があるので、資料1に概要を示すにとどめるが、あえてそのエッセンスをまとめるならば、「生徒が自分の興味・関心に気付き、主体的に進路観を育てることのできるプロセスが確立されている」プランと言うことができよう。そして、ドリカムプランは現在に至るまで大きな成果を上げ続けている。
 だが、このプランにおいて着目すべきは活動内容だけではない。むしろ、実施から9年を経てもなお、取り組みが進化し続けている点にも注目すべきではないだろうか。実際、ドリカムプラン立ち上げ時からの中心メンバーである和田美千代先生は、その点に関し次のように語る。
 「『ドリカムプラン』は絶えず進化し続けています。年度を越えて同じ活動を行ったことは一度もありません。年度ごとの反省は次年度へと引き継がれ、確実に内容の進化につながっているのです」
 実施から9年。ともすれば「守り」に入る危険性と隣り合わせの取り組みが、絶えず進化し続けている背景には、教師間で取り組み内容を絶えず振り返り、評価するプロセスが有効に機能していることが大きい。同校における活動の自己評価がどのように行われているのか、以下、その取り組みの概要を整理してみよう。

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校内の各種会議を通じた、定期的な活動の見直し

 ドリカムプランの進行に当たり自己評価の場の一つとなっているのが、ドリカムプランの運営に中心的な役割を果たしている各学年主任と正副進路主事、進路企画係の6名が集まって、ざっくばらんに活動の問題点を話し合う「進路企画会議」である。ドリカムプラン立ち上げの2年目から、取り組みの推進役を果たしてきた永岡信泰先生は、同会が設置された背景について次のように語る。
 「ドリカムプランは当初、学年進行でスタートしました。しかし、それではヨコのつながりは確保できても、タテのつながりを意識して活動を見通すことができません。そこで、進路部というタテの関係を軸に『進路企画会議』を設置し、全体の統括に当たることとしました」
 同会の設置によって、3年間を見通した取り組みの全体像が明瞭になると同時に、活動の評価についても学年をまたいだ評価が可能になった。
 また、人事面に着目してみると、同校の学年主任は全員、進路指導部所属となっている。タテ・ヨコの有機的なつながりを意識した人員配置により、各学年の現場レベル、そして3年間を見通したより大きなレベルでの問題意識を共有することができているのだ。そして、この人員配置はそのまま同会の規模のコンパクト化にも貢献している。
 「自己反省のための組織とは言え、10名を超えるような規模になってしまうと、なかなか本音で議論を行うことが難しくなってしまいます。6名という規模はその意味でも適切なものだと思います」(永岡先生)
 さらに、名倉政雄教頭によれば、同会の立ち上げ時には、いわゆる「のれん分け」と呼ばれる手法を用いて、人的配置の面でも工夫が凝らされたという。
 「ドリカム1期生の学年団が2年生に上がる際に、新1年生の学年主任をこの学年の中から出すようにしました。人的なパイプを築いていくことで、学年の壁を越えた連携を図り、活動方針に対する共通理解を深めていったのです」(資料2
 同会は毎週の定例会議や各学期末の反省会で、同校の「総合的な学習の時間」である「ジョイント」や、ドリカムプラン全体に対する反省・点検を行っている。また、学年末には、その年度の課題と改善のための方策がまとめられ、次年度への申し送り事項として引き継がれる。その反省が着実に受け継がれていった背景には、このようなアプローチが効を奏していたと言えよう。
 一方、ドリカムプランの実施が学校運営において極めて大きなウエイトを占めている同校においては、学年会や職員会議など、学校を運営していく上で常設されている数々の会議もまた、ドリカムプランの見直しにおいて大きな役割を果たしている。特に年度末の職員会議では、各分掌ごとに、年度全体の「良かった点」「改善すべき点」「改善のための方策」が具体的に示され、教師間でのコンセンサス作りや次年度への継続に生かされている。

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