指導の反省点をストックし 次年度の授業改善に生かす
シラバスを授業改善に生かすという点についても同校は留意している。生徒用に提示するシラバスと同じ形式で教師用の年間指導計画も作成し、単元ごとの指導ポイントや留意点を、書き込めるようにしているのだ。そして、毎学期の反省、年間の反省を入れたものが年度末に回収され、次年度の指導の参考にするために科目ごとにストックされている。
「化学で言えば、実験を行う際の指導ポイントや、使用教材に関する情報が蓄積されています。これにより、分子の構造を説明する際に同じ模型を使用することや、実験を行う単元を教師間で揃えるなどの工夫ができるようになりました。また、実験を行う際の安全確保の方法や、『問題演習のこんなところで生徒はつまずく』など、より細かな指導上の経験情報についても、これからは積極的に蓄積していきたいですね」(古家先生)
さらなる改善のために 生徒・教師の意見をアンケートで集約
シラバスの運用を開始して既に3年。生徒たちの間にもシラバスを見ながら授業に臨む姿勢が次第に根付いてきた。だが、同校ではあくまでもこのシラバスを「完成形」としては見ていない。実際、02年度の7月には、生徒・教師を対象にアンケートを実施し、改善点を洗い出した。
「生徒・教師の意見で最も多かったのは、評価のポイントをしっかり示すべきだという意見でした。絶対評価が高校現場でも本格化しつつありますから、学習目標とリンクした評価の在り方も含め、具体的に研究したいと考えています」(荒神先生)
また、一部の生徒から「実際の進度とは違う」という声が寄せられたのも事実だ。新課程初年度となる03年度に向けて、この点は十分検討が重ねられなければならないだろう。
「意識の高い生徒は今でさえシビアな目で教師を見ています。次年度に向けては一から指導計画を考え直さなければなりません。特に本校はスーパーサイエンスハイスクールに指定されていますから、今まで以上に妥協は許されません」(荒神先生)
次年度の教科書研究、進度調整、教科間の連携、さらにはシラバスのフォーマットの改善など、同校が03年度に向けて取り組もうとしている課題は多い。それでも同校の教師たちが前向きにこれらの作業に取り組んでいるのは、シラバス作成を通して着実に指導改革が進んでいるからではないだろうか。
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