VIEW21 2002.10  新課程への助走

自治体レベルでの取り組み事例
大阪府教育センターの場合

「評価と指導の一体化」に向けて
生徒の実態を踏まえたシラバス作成を推進

 学校単位でのシラバス作成が本格化する一方で、県教委などが率先して学校側にシラバス作成を打診するケースも見られるようになってきた。いち早く動きを見せた大阪府教育センターの 正隆主任指導主事、門田浩一指導主事に、その背景やねらいについてうかがった。

 大阪府教育センターは、03年度より一部の科目について、シラバスの作成・提出を府下の各高校に義務付けることを決定した。提出が義務付けられたのは学校設定科目を開設する場合と、必修科目の単位数を標準単位よりも減らす場合の2つのケース。菅主任はその背景を次のように説明する。
 「学校設定科目には教科書がありませんから、生徒や保護者は事前に授業内容を把握する方法がありません。どのような授業が行われているのか、開示していくことは学校として今後取り組まねばならない課題だと考えました。また、標準単位より単位数を減らす場合についても、どのようなねらいでそれを行うのかを教育センターと協議する際の資料にすると共に、生徒・保護者に開示することが必要になると考えました」
 だが、こうした背景とは別に、今回の決定には他の目的もあったと菅主任は言う。それは、高校においても絶対評価の導入が検討されている中で、各高校にその概念を踏まえたシラバス作成を促そうという目的だ。
 「『評価と指導の一体化』とよく言われますが、絶対評価の導入が高校でも現実的なものとなるならば、その言葉の持つ意味は益々大きくなります。つまり、シラバスに基づく精緻な指導と、その成果がきちんと出ているかどうかを検証する評価の関係がより密接なものになりつつあるのです」
 ここで浮上してくるのが、「絶対評価」に基づく評価規準がどこまで精緻化できているかという問題だ。例えば、従来であれば「平常点」という項目でひとくくりにされていた要素が、授業への意欲、技能・表現など、さらに細かな評価規準に細分化される。しかも、その各々について到達度に基づく評価が求められるのだ。
 「評価規準をどこまで精緻に考えられるかという問題と共に、各評価規準が到達度評価の指標として有効かどうかなど、現場で検証が必要になる要素は一気に増えるでしょう。そこで、この夏、私たちも何パターンかの見本を作成し、高校側に提示しました」(菅主任)


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大阪府教育センター
菅正隆
Kan Masataka
教職歴16年目。指導主事として6年目。現在、主任指導主事。「『闘う指導主事』がモットーです」
大阪府教育センター
門田浩一
Kadota Hiroichi
教職歴18年目。指導主事として1年目。「『後悔するならやってからにしよう』がモットーです」

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