辞書を使えないのは、道具を使えない大工さんと同じ
共に中学生の指導に当たっている小林穣先生が話を続けた。
「辞書を引くといった基本的な学習習慣が身に付いていないと感じることも多くあります。中学の教科書には、取り上げる単語と意味の一覧が掲載されていて、辞書を引かずに3年間済ませることができてしまう。その結果、高校生になっても辞書が引けない、引けても該当する意味を選ぶことができないという生徒が増えています」
山賀先生も頷いて言った。
「英語を学ぶ上で『辞書を使えない』というのは、大工さんが基本的な道具を使えないということに等しいと思うんですよ」
この日は、ちょうど中学1年生の授業があり、中学生に初めて辞書を使わせる日に当たっていた。
まずは一通り辞書の引き方を教えた後、「have」や「draw」などの基本語を引かせ、多様な意味があることを理解させた上で、それぞれの単語の意味のイメージを考えさせる。こういった語は広い意味・用法を持ち、高校でも繰り返し取り上げることになる単語ばかりだ。
「高校では、中学で学んだ基本語の意味や用法を深めることになる。もちろん中学での導入も大切ですが、高校でも、そのときの学習内容に合った辞書指導が大事です。高校の授業で新しい意味・用法を学習するときには、基本語のイメージを繰り返し提示して、生徒の理解を深めさせたいですね」(山賀先生)
辞書を引かせることで学習習慣付けを
週5日制、単位数減の影響で、校内で指導できるキャパシティは減少してきている。その分、生徒自らの学習への動機付けや学習習慣を身に付けさせることの重要性が益々高まっていると、山賀先生も小林先生も口を揃える。
「授業や家庭学習で、自分で単語を調べる機会を増やし、分からないことがあれば、まず自分で辞書を調べてみるといった学習習慣を付けていくことが大切だと思います」(小林先生)
新しく生まれたばかりの同校。
「現在の取り組みの成果が見えるのは、3年後、いや5年後かも知れません」と言って、山賀先生と小林先生は笑う。
気の長い話ではある。しかし、そのときには、今よりもさらに中学・高校の接続がスムーズに行われ、指導を行う上でもより大きな楽しみが、二人の先生を待ち受けているはずである。
辞書指導の授業。黒板に図を描き、多義語のイメージを説明する。
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