VIEW21 2002.12  リーダー群像
 現状をどう捉え、どう行動したのか

農家のゴミ捨て場を借り
創業事務所も工場もすべて自分達でつくった

 140人の社員を全員解雇する日が、刻々と差し迫ってくる。かつて勤めていた証券会社で自分が立てたシナリオだったが、会社のことを徐々に知っていくうちに「本当にこのまま潰してしまってよいのだろうか」という気持ちが頭をもたげてきた。
 「元の経営陣がそのまま経営を続けるのでは、また失敗してしまうかも知れない。そこで、自転車部門と車イス部門に会社を分割し、自転車部門を元役員が、車イス部門を私が引き継ぐことにしたのです」
 村山社長はカワムラサイクルの商号と自転車部品の在庫を分割払いで買い取り、転職先である証券会社を辞めてカワムラサイクルと、40人強の社員と運命を共にすることを決心した。
 「自分の手掛けた仕事が失敗したというのが心残りでしたし、私を迎えてくださった会社の方には申し訳なかったのですが、正直に言えば証券業界にまた戻るというのも気が引けた。車イス事業がキラキラして見えたかというと、そういうわけでもない。でも、一度お金で動いてしまって失敗した経験があるから、『ものづくり』という仕事にお金に替えがたい魅力を感じていたのかも知れません。みんなで力を合わせれば何とかなるのではという気持ちが半分、意地のようなものが半分でした」

写真
(写真上)
カワムラサイクルの社屋。規模の拡大に伴い、社屋を7年のうちに4回移転。毎回社員全員で、一から社屋づくりを行ってきた。

(写真中)
パソコンで注文後、約2週間で自分の身体に合った車イスができ上がる。このシステムは、車イス業界では、画期的だった。

(写真下)
出荷作業。台湾や中国の企業と合弁会社を設立し、安くて質の高い車イスづくりを目指している。



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