VIEW21 2002.12  指導変革の軌跡 兵庫私立須磨学園高校

 また、同校では、生徒や保護者が「学校の変貌」を捉えやすいように常に情報開示を心掛けている。学校案内やホームページなどの広報活動に加え、シラバスの開示や入学式での各教科ごとの教育方針の発表などは特徴的な事例と言えるだろう。
 例えば、図1は同校の学校案内に掲載されている「特進コース」のシラバスである。授業内容を示しているだけではなく、「入試単語5000、センター85%」など、目標を数値化しており、「Check & Retention」の内容では、シラバスで設定した目標のチェックテストを行うこと、また到達目標に達しなかった生徒には個別指導を実施することなどが明示されている。


図1 学校案内に掲載されたシラバス
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学校案内に掲載されている特進コースのシラバス。目標を数値化することで、生徒や保護者に分かりやすく到達点を示すことができると同時に、生徒や教師のやる気アップにもつながっている。

 「これは、3年間の大まかなシラバスですが、『各学年のこの時期には、何を勉強する』ということを明示したもっと詳細なシラバスもあります。ただ、あまりシラバスに縛られすぎると、生徒の実態と乖離してしまいかねません。大きな目標は崩さないけれども、生徒の理解度に合わせて、教える内容は各教師が修正できます。その辺りは柔軟ですね」(松本先生)
 プロジェクトで決定された内容は、ややもすると、軌道修正されることなくそのまま実行されてしまいがちである。しかし、同校では、いつも生徒の側に立って修正すべきことがあればすぐに修正できるようになっているのだ。
 同校の入学式では、学園長が同校の教育方針や授業の体制、3年間で行われる行事などを発表した後、英語・国語・数学の各教科部長がプレゼン用ソフトを使って、「須磨学園で学ぶとどのような成果が上がるか」を説明することになっている。
 「英語では『須磨学園で英語を勉強したらどうなるのか』『なぜ英語の力が付くのか』『どのような指導プログラムがあるのか』という項目でプレゼンしました(図2参照)。書いてあることは、どの高校でも普通に行っていることだとは思いますが、これを生徒や保護者の前でプレゼンするというのは、『絶対実行します』と公約すること。シラバスにしてもそうですが、言ってしまった以上は実行しないといけない。自殺行為かと思うほどです(笑)」(松本先生)
 しかし、このような情報開示が、保護者からの信頼を得るだけでなく、生徒や教師のモチベーションアップにも確実につながっていると松本先生は言う。


図2 入学式での教育方針発表
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英語科では、下の3枚のプレゼン用シートを使い、3年間の教育方針を生徒と保護者に説明した。

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