VIEW21 2002.12  大学改革は高校現場の指導をどう変えるのか?

2 討論
大学改革と高校教育の接点を考える

 天野教授の基調講演を受け、高校の先生方3名に加わっていただいて座談会を行った。高校現場の指導ではどのような課題が想定されるのか、また、変化を受けてどのような指導が必要とされるのかを話し合っていただいた。


【議論1】国公立大の再編・統合と独立行政法人化
教育機会が失われる可能性が現実のものに

国公立大の再編・統合は教育機会を失わせる?

高田 先程、天野教授がご指摘くださったように、高校現場に最も影響が大きいと思われるのは、生徒の進学先に直接かかわってくる国公立大の再編・統合の問題だと思います。

山上 青森県の本校としては、弘前、秋田、岩手の北東北3大学の統合構想が一番気掛かりです。近年の就職難などの影響で、かつては高卒者の就職率が全国一だった青森県でも大学進学率が上昇しています。しかし、もし北東北3大学の統合によって地元に大学がなくなったらどうでしょう。この3大学は車で行っても数時間かかるくらい地理的に離れていますから、地元にキャンパスがなくなった地域の生徒は下宿せざるを得ません。経済的に厳しい家庭では「進学したくても進学できない」という事態が現実に起こり得ます。同一地域の単科大と総合大が統合するのとでは、全く意味合いが違ってくると思うんですよ。大学の再編・統合によって教育の質が上がるどころか、教育の機会そのものが奪われてしまっては困ります。

高田 大学の再編・統合が、ともすれば教育の機会を奪ってしまうことにつながるのではないか、というご指摘ですね。一方、大学の再編・統合については、教員養成系学部の再編という問題も指摘されていますが、影響を受けておられるところはないでしょうか。

岩瀬 本校からは愛知教育大に進む生徒がかなりいるので、その動向には以前から注目しています。特に現在のゼロ免課程が今後どうなるのかについては大きな関心を寄せているのですが、大学側から公式な情報がまだ出ていません。先行き不透明なまま生徒が入学してしまってからでは遅いですから、決定次第、大学側は高校側に対する説明責任を果たしてほしいと思っています。

高田 ゼロ免課程の動向は確かに問題ですね。現在では「第2文学部」と言われるくらい存在意義が不明瞭になっていますから。再編・統合と言っても経営の合理化以外に論点が見えてこない面はありますね。


参加者
 3名の先生方と、基調講演をしてくださった天野教授、ベネッセ教育総研からは所長の高田が参加した。

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青森県立弘前高校教諭
山上佳男
Yamanoue Yoshio
教職歴28年目。同校に赴任して11年目。進路指導部長。数学担当。「やらなければできない。やるからできる。教師も生徒も」
神奈川県・聖光学院中・高校教諭
安宅克己
Ataka Katsumi
教職歴21年目。同校に就職して21年目。教務部副部長。国語担当。「生徒が持つ無限の可能性を引き出す手伝いをしたい」
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愛知県立豊田西高校教諭
岩瀬正光
Iwase Masamitsu
教職歴26年目。同校に赴任して16年目。進路指導主事。地歴担当。「『軸足はいつも生徒に』という先輩教師の言葉がモットー」
ベネッセ教育総研所長
高田正規
Takata Masanori

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