VIEW21 2003.2  VIEW'S REPORT 当世修学旅行事情

【事前学習】
テーマ学習の手法を導入し生徒の学ぶ意欲を喚起

 「情報収集力や集めた情報を吟味する力、そして、それらを分析し、表現する力を身に付けさせたい」(高田先生)という目的を踏まえた同校の「総合学習」でまず目を引くのは、2年生11月の修学旅行に向けて、全13時間もの事前学習の時間が設定されていることだろう。年度によって多少の変動はあるものの、(1)クラスごとに「自然」「平和」「生活」「文化」の4つのキーワードから社会問題全般に関するテーマ学習を行う→(2)クラスを解体し、現地の体験学習コース別にチームを編成する→(3)沖縄に対象を絞り、それぞれのチームに応じた内容の事前学習を行う、という流れがほぼ確立している(図1)。

図

 「事前学習の時間を充実させることで、修学旅行に対する期待感を高めていくことができます。また、テーマ学習の手法を取り入れることで、情報収集力や情報を吟味する力の育成を図ることもできるのです」(高田先生)
 しかし、従来は「楽しむための行事」だった修学旅行を、「学習機会」として位置付けることに、生徒は戸惑いを覚えなかったのだろうか。今年度、「南風原(はえばる)高校との文化交流と沖縄菓子づくり」チームの担当だった前島道子先生は、「むしろ好意的に受け止めていた生徒が多かった」と回想する。
 「これまでの修学旅行では、現地の食文化や生活文化に触れてもあまり関心を深めることができない生徒がほとんどでした。しかし、その原因は事前に生徒の興味・関心を引き出すような指導ができていなかったことにあると思います。ちょっとしたきっかけを与えるだけで、沖縄料理の歴史や特徴などについて、生徒の方から積極的に知りたがるようになりましたし、中には授業で配った資料だけでは満足できず、自分でインターネットで集めた資料を整理して持ってくる生徒さえいました」
 事前学習の時間は市販の図書や教材を使って行われるが、担当の教師が独自の教材を用意することも奨励されている。例えば前島先生のチームでは、伝統的な楽器「三線(さんしん)」を弾いて、沖縄文化への興味付けを行ったり、実際に沖縄の食材を使って調理実習を行ったりもした。さらに、ひめゆり部隊や鉄血勤皇隊の歴史を題材に、クラス内で独自の課題研究・発表会も行った。
 「『最低限ここは押さえたい』という部分以外は、教師の創意工夫を生かすことがあってもいいと思います。教師間で『自分のところはこうやった』『あの先生のところではこうやった』などと情報交換をしながら、内容を深めていくことができますから」(前島先生)
 事前学習の成果は、体験学習コース別に、各自1冊のファイルにまとめられ、それがそのまま修学旅行の事前資料となる。生徒たちは事前に十分問題意識を高めた上で、現地での体験学習に臨むことができるわけだ。

写真
「アメリカ人家庭のホームビジット」コースの体験学習の一コマ。事前学習を踏まえ、能動的に体験学習に臨む生徒の姿が目立った。



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