2 「学びに向かう力」と進路意識との関係
現在、多くの高校で進路学習が展開されているが、活動の成果として期待されているのは、生徒に将来の目標を描く力が付くこと、さらにそれが学習意欲の向上にもつながることなどである。
共同研究では、生徒の進路意識の発達を図2に示した8段階モデルによって整理した。そして、学習動機への反応との関係を調べたのが図3である。学習動機については市川教授の2要因モデルの考え方に学び、いくつかの質問項目(図3掲載)を設定し、その肯定度(自分自身が勉強に向かう理由として当てはまると思う度合い)を計測した。
進路意識の高まりと動機づけへの反応
図3を見ると、高校生が学習動機として「当てはまる」と回答する割合が高いのは、C報酬志向やF実用志向、D充実志向であり、「入試」「将来に役立つ」「できる喜び」などが生徒の「学習意欲」を強く支えるキーワードであることが確認できる。
次に、「進路意識の発達」と「学習動機への反応」の関係について見てみたい。内容分離的動機のC報酬志向やA関係志向は進路意識の発達とは、ほとんど無相関であることが確認できる。一方で、内容関与的動機、特にF実用志向やD充実志向は進路意識が高まるにつれて反応レベルが強まっていることに注目したい。
生徒の進路意識が低い段階にあるうちは、報酬志向には強く反応するが、他の動機への反応は鈍く、勉強を「入試との関係」や「損得」に偏って考えがちである。しかし、進路意識が発達してくると「今勉強していることを自分の将来に役立てたい(実用志向)」とか、「勉強して分かるようになること自体が楽しい(充実志向)」と思える生徒が増えてくる。このような意識が持てれば、学習している内容そのものの意義を感じやすくなり、学習方法を自分で工夫する姿勢にも結び付きやすい。また、進路意識の発達に伴いB自尊志向やE訓練志向に対する反応レベルも緩やかに向上しており、進路意識の発達した生徒ほど複数の学習動機に支えられた状態にある。これは、学習にくじけにくい状況に置かれているとも言えるだろう。
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