VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

3 進路意識発達の8段階モデル

 次に、それぞれの進路意識の発達段階について特徴と指導ポイントを述べたい(図2参照)。

I 「無関心」「猶予」のレベル
 「どうせ自分なんて」と自己を否定的に捉えていたり、「将来のことはまだまだ先」と考えて「今」にしか目が向かない段階の生徒たちである。
 具体的な進路目標を設定する必要性を差し迫って感じていない、または向き合うことを避ける傾向が強いため、目標を絞り込む指導の前に自分と向き合い「大切にしたいもの」や「自分の適性(長所)」を考えるなどの、自己理解や自尊感情を高めるための指導が必要である。保護者や学校の先輩など、身近な人の生き方から学ぶことが有効な場合が多い。
 全国規模の調査では、この段階の生徒の比率は6~8%程度と少ないが、学校によってはより多くの構成比を占める場合もある。
 進路学習プログラムで、「自己理解」や「働くことの意義」などの「生き方・在り方」に関する項目を高校入学後の早い時期に実施している学校が多い事実を踏まえると、高校での進路学習の成果が、この程度の占有率に止めているとも考えられる。

II 「混乱」から「探索」のレベル
 「調べ学習」や「体験学習」を通じた進路目標の収斂や拡散を最も必要としているのは、この段階の生徒たちだと考えられる。自分の志向性や適性がうまく把握できていない場合も多く、自己分析の機会や材料の提供も重要である。
 具体的な特徴としては、(3)混乱:どのように目標を定めてよいか分からず混乱して不安、(4)模索:あれかこれかと複数の選択肢に迷っているが、選択の基準が定まりにくいために自己限定しにくい、(5)探索:自分一人で進路目標を決めたが「思い込み」に陥りやすく現実との対峙ができていない、などが挙げられる。最近の調査では高校1年生から2年生秋までのおよそ半数の生徒がこの段階に属しており、「生き方」の指針を探している高校生の多いことが確認できる。

III 「希望」「早期完了」「達成」のレベル
 自己の興味・関心や適性・能力を踏まえて一応の目標を定めることができ、意欲に溢れているのが(6)希望の段階である。学習意識や学習行動の面で最も積極的になりやすい。
 この段階の生徒には、「なりたい自分(目標)」と「今の自分」との距離を確認させ、その距離を埋めるための教科学習のアドバイスを与えることが最も必要となる。また、「目標」が、未だファジーな「夢」や「憧れ」のレベルに止まっている場合には、実現するためのハードルの高さにくじけて目標を変更する可能性も高いので、目標への意志をより確かにするための進路情報の提供が必要な場合もあるだろう。
 「なりたい自分」に近付くためには「能力不安(本当にできるだろうか)」との対峙は避けて通れないのだが、この対峙を避けて自分の現状と妥協をし、「なれそうな自分」の範囲内で進路の選択肢を探そうとするのが(7)早期完了の生徒たちである。
 一方で、「能力不安」と対峙しつつも目標実現に向けて努力しているのが(8)達成の段階と言えるだろう。


<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.