VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

4 「学ぶ力」と自己コントロール力

 進路意識の発達によって学習意欲が高まれば、学習行動は成立しやすくなる。しかし、現実に「結果としての学力」を向上させるには、学習を「継続する力」が不可欠である。
 そのため、「多少の困難があっても耐えてやり遂げようとする志向性(=自己コントロール力、対処性)」についても計測して、学習行動との関係を検証してみた。

対処性レベルと学習時間の関係

 対処性の計測に関しては、いくつかの質問を用意してその回答から6段階のレベル(L1低い/L6高い)を設定した。
 対処性レベルと家庭学習時間の関係を示したのが図4である。参考に示した学力レベル別のデータと同程度かそれ以上の相関があることが分かる。また、この調査母集団の場合、対処性の高い生徒の中には、現時点の学力が必ずしも高くない者もいる。しかし、彼らは学習を習慣化できる資質は高いので、適切な学習方法の指導によっては、今後の学力を高く引き上げられる可能性を秘めていると言えるだろう。
 対処性は、教科学習のみならず特別活動も含めた教育活動の様々な場面で育つものであるが、責任感や正義感同様、とりわけ集団活動や人間関係の中で「小さな成功体験」を積み重ねることを通して育まれる側面も大きい。

図

学力レベル別の学習行動

 学力レベル別の学習時間を見ると、特に英語・数学については全国偏差値50台までは学習時間の少ない生徒が多いこともあり、学習時間と成績の間には明確な相関がある。一方、偏差値60台以上のレベルでは、学習時間と成績の明確な相関は見られず、むしろ学習の中身が一層問われることになるようだ。
 そこで次に、学力と学習方法、学習内容との関係を検証し、学力向上につながる効果的な学習方略について考えてみたい。


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