VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

5 効果的な学習方略を考える

 生徒が「何となく、やらされている」勉強を脱して、「ねらいを持って効果的に」学べるようになるには、どのような点に留意させることが必要であろうか。いくつかのポイントに整理してみたい。

(1)授業と家庭学習の連携を意識して学ぶ
 宿題を出されれば勉強する(受動的学習)生徒は多いのだが、それに比べて自ら予習や問題演習を行う(自主的学習)生徒の比率は少ない。全国的に見ると、英語では比較的授業の進度に合わせた学習が成立しているが、数学では受動的学習と自主的学習の格差が大きい(図5)。
 予習が必要になるように授業を工夫したり、予復習となる宿題をプリントで課すなどして、まずは受動的な学習から生徒の学習習慣を形成しようとする学校は多い。しかし、生徒は意外に強制されることを好む(そうでなければ学習に臨めない)ため、「強制された学習」から「意図的な学習」への移行を、どの時点でいかに行うかが課題になってくる。
 また、各校で作成が進められつつあるシラバスで考慮すべきポイントの一つとして、生徒が自主的に学習計画が立てられるように配慮する視点が挙げられる。「いつ・何を・どのような目的や目標を持って学ぶのか」を示して具体的な学習の見通しを持たせることや、学習内容相互の関連に興味を持たせることは、自主的な学習へ向かわせるために有効である。

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(2)推測や仮説形成を大切にし、思考力を働かせながら学ぶ
 問題演習を「獲得した知識の単なる放出」として認識しているうちは、生徒の思考力は育ちにくい。知識と知識をつなぎ合わせ、そこから「解」を導く方法を学ばせたい。
 数学ですぐには解けない問題に遭遇した場面(図6)は、まさに思考力を鍛えるチャンスであり、「20分程度は自分なりに考える」ことと、成績との相関も高い。もちろん、引き出すべき基本知識(公式・定理など)の見当がつくことが前提となるが、この前提条件を一定以上クリアしていると考えられる学力A層以上の生徒であっても4~6割は自分で考えてみるより先に「解き方」を知ろうとしており、試行錯誤の機会が十分に生かされていない状況がうかがえる。
 また、英語の辞書を引く際に、「語句の意味を推測し仮説を持って辞書で確認する」学習行動は、読解力に高く寄与するものである。しかし、これに取り組んでいる生徒は、偏差値73程度以上で4割近くにはなるものの、全体では少数である(図7)。

(3)失敗の原因を分析し、失敗から学ぶ(教訓帰納)
 多くの生徒は「テストで間違えると悔しい」と考えている。しかし、数学を例に取ると「間違えた問題の答え合わせはする」ものの、「解法の理解や類題への挑戦は行わない」生徒が学力層にかかわらず4~5割を占めており(図8)、問題をやり直して失敗に学ぶ姿勢は決して十分だと言えない。失敗を必要以上に恥じたり恐れたりせず、より確かな学力を獲得するチャンスと見なし、積極的に「失敗から学ぶ」ことが優れた学習方法であると生徒に伝えたい。

(4)生徒自身の自己評価力を育てる
 学力を多面的、階層的に捉える視点は、教師のみならず生徒自身にも必要だと言える。「現在、結果として身に付いている学力」に一喜一憂する表層的な自己評価ではなく、目標との距離を見極め、自分にとっての学習の意義や学習のプロセスに対しても評価できる眼を養わせたい。それがこれからの「(好むと好まざるとにかかわらず)生涯学習(せざるを得ない)時代」を生きるために必要な自己学習力の基盤である、とのご指摘を共同研究の中でも多数いただいた。

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