VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

授業と連携した家庭学習の定着を図る

佐渡 「英語を話すのは楽しい」という動機づけはできても、学習を習慣化させることはなかなか難しいですね。本校では、英語に限ったことではないのですが、自宅学習時間の記録を提出させるために、冊子を持たせています。普段の自分の生活を振り返らせることで自覚が高まり、教師が目を通した上で返却することが生徒の励みにもなるようです。
三浦 生徒が取り組んだことを、教師がきちんと評価してあげることで、「ちゃんときみを見守っているよ」と感じ取らせる工夫は学習習慣の定着に非常に大きな役割を果たすようです。本校では、授業を徹底的に活用することこそが、最も効率的な学習方法であることを生徒に実感させようと、授業内容に関する予習・復習課題を毎時間課しています。家庭学習の内容と授業とを有機的に関連付けてあげることがねらいですが、この課題についても必ず全員分を「見たよ」ということが分かる状態でその日のうちに返却しています。教師からの評価が継続的に与えられることで、生徒の学習動機に常に新たな刺激が加わるのです。
 また、毎時の授業で課題を出すに当たって、学年の英語担当が連携して持ち回りで準備を行うのですが、これによって授業のポイントや目標が教師間で共有できるようになります。授業方法などについての話し合いも活発になります。
佐渡 ただ、自宅学習時間の記入や、課題の提出などのきっかけを与えて学習を始めさせても、すぐには結果となって現れてきませんから、その間の辛抱ができなくて脱落してしまう生徒は多いですよね。学習が本当の意味で「習慣化できた」と言えて、また結果が現れてくるには、3か月が一つの目安になるので、諦めずに続けるよう生徒を励ましています。
三浦 英語は「時々たくさんの量を勉強する」よりも、「少しずつでも毎日続ける」方がはるかに効果的です。覚えることについても、一度に覚えようとするのではなく、「忘れるのは当たり前だから繰り返してやろう」といった考え方が重要だと思います。忘れている自分に出会うことが恐怖になり、暗記自体が嫌になる生徒も少なくないのですが「何度も何度も頭に流し込むことが大事。そのうちコーヒーのフィルターのように目詰まりして頭に残っていくよ」などと話して、生徒の気を楽にしてあげるようにしています。

「伝えたい中身」を持った生徒を育てたい

佐渡 生徒には、「伝えたい中身」を持つことの重要性も伝えたいですね。講演や文章を通じて、日本人、外国人の別を問わず国際的な活動をしている方のお話に触れさせ、「自分はどう思うか」「自分は将来どうなりたいのか」という意見を日本語と英語で書かせるようにもしています。初めから英語で表現することにこだわらずに、まずは日本語で「伝えたい自分の考え」を持たせるところからスタートしても良いのではと思います。
 ただし、本校は卒業後の進路希望も多岐に渡るので、動機づけの工夫にすぐに反応する生徒がいる一方で、なかなか反応してくれない生徒もいます。これは残念なことですが、それでも焦らず諦めず、英語を学ぶことは将来の可能性を広げることであり、今すぐ使わなくても、どんな仕事にも深みや広がりを与えるということを折に触れて話すようにしています。
三浦 「英語は実用的だから学ぶ」という生徒は多いですが、それだけではなくて「学ぶことそのものの楽しさ」を味わわせたいですね。教養の価値を高校生にすぐに理解してもらうことは難しいかも知れません。しかし、教養を身に付けておくことが、人間関係の構築も含めて人生を豊かにすることを、伝えておくことは重要です。自分の担当教科以外についても、それを学ぶ意義や価値、学んでおくべきだったと後から思った経験などを話すようにしています。その教科の担当者以外の口から聞くと説得力が増す場合もありますよね。


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