VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

【数学】
「できる」と「分かる」は違うことを認識させる

竹内 「生徒のやる気を育てる」と言いますが、前提として確認しておきたいのは、最近の生徒は真面目な子がとても多いということです。課題はきちんとやってくるし、計算問題を解くように言えば、言われた通り解いている。
 ただし、出された課題に主体的に取り組んでいるかというとそうではなく、むしろ問題と解答を書き写すなど、課題を提出すること自体が目的になっている生徒も少なくありません。
桝本 同感です。授業中でも、「数学を本当に理解したい」と考えて主体的に学習に取り組んでいる生徒は少ないように感じます。それは、中学までは公式が成り立つ意味など考えなくても、問題の解き方さえ習得すれば、テストで良い点を取れたことが原因の一つだと思います。だから、問題を解いてつまずくと、なぜ解けないかを考える前に、答えや解き方をすぐに知ろうとするし、答えさえ合っていれば良しとして、解に至ったプロセスの吟味をあまり行おうとしません。
 知識を総動員して自分なりに解にアプローチしようとする生徒が圧倒的に少ないですね。
竹内 確かに「できる」と「分かる」は同義語ではないことを、きちんと認識している生徒は少ないですね。解き方を知っていて問題は解けるけれど、「この式は一体何を意味しているのか」ということには全く無頓着です。解き方さえ要領よく身に付けていれば、受験には対応できるかも知れませんが、主体的な学びにはなっていかない気がします。

対話形式の授業の中で数学の本質に気付かせる

桝本 私は、授業は基本的に対話形式で進めていくことにしています。一つのテーマに対して「どう思う?」と問うことから始める。例えば、Y=2X+1の式が何を表すのか、この式が方程式と呼ばれたり関数と呼ばれたりするのはなぜかを生徒に改めて考えさせる。すると、生徒は違いを上手く説明できません。そこで、ヒントを与えながら、生徒自身の言葉で少しずつ語らせていくと、その概念の本質に段々と気付いてくるのです。問題をどう解くかを学ぶのではなく、数学の合理性を知り、正しい理解に立った自らの素直な判断が、真理への第一歩であることを知ると、生徒の自主性は全く違ってきますし、結果として幅広い学力にも反映されます。
竹内 対話形式の授業によって、生徒が今まで「分かったつもりになってきたもの」を崩していくわけですね。その方法は、一見受験には役立ちそうにはないけれど、実は数学をマスターする上では近道なんですね。


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愛知県立五条高校教諭
桝本郁二
Masumoto Ikuji
教職歴22年目。同校では5年目。「『正しいことをすれば、正しいことに至る』と信じる勇気を」
愛知県立豊野高校教諭
竹内英人
Takeuchi Hideto
教職歴10年目。同校では2年目。「こだわり・チャレンジ・ユーモアの精神を持ってほしい」

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