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―「信頼の欠如」に対してはどのような対策が有効でしょうか。
このように、マスコミや人々の意識が働いているところで、学校が直接できることには限度があると思いますが、次の二つが重要です。一つは、柔軟な発想で誠実な努力を続けることです。もう一つは、学校・家庭・地域の協力関係を再構築していくことです。校内暴力やいじめが問題化した70年代末以降、学歴や受験といったことに関しては学校に期待をしながら、一方で「学校叩き」が行われるようになりました。社会も家庭も変わる努力をしないにもかかわらず、様々な問題をすべて学校のせいにするわけです。重要なことは、責任のなすり合いをするのではなくて、学校や家庭や地域が本当の意味で支え合うことです。そのためには、学校、家庭、地域の三者がそれぞれ責任の当事者として情報や問題を共有していかなければなりません。ここで大事なことは、情報だけでなく問題も共有すること、自分たちで学校を良くしていくのだという心構えを持つことです。
―「教育の武装解除」はどのような問題をはらんでいるのでしょうか。
私は今こそ「教育の再武装」が必要だと思っています。その考え方から言えば「学びのすすめ」にも見られる学力重視の方針への転換自体は良いことだと思います。しかし問題は、そのやり方と一連の政策との整合性です。「学びのすすめ」の大きな柱は、基礎・基本をきちんと習得させて、朝読書や家庭学習や補習をすることと、個性・能力に応じて可能な限り才能を伸ばすように様々な機会を与えることです。この二つが骨子になっていますが、これらは大きな矛盾を抱えています。例えば、学校週5日制はもう前提になっていますし、学習内容の大幅削減もスタートしています。つまり、一方で学習時間を減らし、学習内容を減らしているのに、もう一方では実践的に学力を付けなくてはいけないと言っているのです。また、文部科学省は、日本が発展していくためには国際的なエリートを養成する必要があると言って、そういう人材がどんどん先に進めるように、巨額の予算を計上してSSHやSELHi、学力向上フロンティア事業などの多様な機会を提供しています。その一方で、すべての子どもたちにきめ細かな指導をするためには小人数学習が必要だとも言っています。しかし、この小人数学習については国が予算を付けるのではなく、各自治体の裁量・判断で行うように指示しているのです。確かに、実施する自治体は増えてはいますが、財源的に限界がありますから、当然できないところも出てくるわけです。つまり、大多数の子どもたちへの教育は、条件的には従来と変わらない一方、一部のできる子ども、先に行かなくてはいけない子どもたちのための選択肢はどんどん広がっているのです。しかし、これは「強者の論理」だと思います。強い者だけが機会をエンジョイすることができるかも知れないという考え方で、教育の枠組みが大きく変わっているのです。
図1 21世紀教育新生プランの概要(抜粋)
「21世紀教育新生プラン」の詳細については、
文部科学省ホームページ参照
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