ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
生徒の多面的把握が指導を変える
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 第1回の面談では、主として生徒の生活習慣や学習習慣の把握が目指される。そして、面談の結果は担任の帳票のみならず、生徒の持つ「プログレス」にも記録され、次回の面談へと引き継がれる。すなわち、面談を通じた「課題の発見」→「達成状況の確認」→「次の目標の提示」という流れが、教師・生徒の双方に保証され、3年間を通じて構築されているのだ。
 さらに、同校の取り組みで注目すべきは、もし面談を通じて問題が見つかった生徒がいたならば、クラス担任、教科担任を問わず、学年団のすべての教師が放課後に個別面談を行うなどして継続的に生徒をフォローする点だ。
 「生徒の状況を把握し、問題点を見つけ出せたとしても、それを改善できなければ意味がありません。本校では学年団の教師全員が『学年担任』として一人ひとりの生徒と接することを目指しています。教科の授業以外に接点がない教師と生徒が、生活上の課題を話し合うといった光景は、本校では珍しくありません」(諏佐先生)


把握した生徒の情報を共有する仕組み
 担任以外の教師も生徒一人ひとりを直接指導する――。全国的にも珍しいこうした指導スタイルは、把握した生徒の情報を学年団の教師全員が共有することによって支えられている。例えば、先の「面接週間」の後には、養護教師や部活動顧問まで参加した「教科担任会」が必ず設定され、情報共有が図られている。
 「面談で担任が得た情報は、必ず『教科担任会』で他の教師にも伝えられます。また、教師同士が意見を交換することで生徒把握が格段に深まります。例えば、養護の担当教師から『あの生徒は最近よく保健室に来る』という情報が提供され、部活動顧問から『最近は部活動への意欲が落ちているようだ』といった情報が寄せられれば、内面も含めた生徒の全体像をより正確につかむことができます。このレベルまで生徒を把握してこそ、内容のある個別面談ができるのです」(諏佐先生)
 また、生徒の学力情報や実態調査といった客観データを共有するためには、模試や定期考査の集計データを基に、毎学期末に「成績分析会」が開催されている。
 「『成績分析会』にも教科担任全員が出席します。その場で教科指導の問題点が共有できますし、『具体的にこの分野の補習が必要だ』という話になった際にも、その場で調整することが可能です。さらに、本校では3年次に特定の科目の学力が低かったり、特殊な入試を受験する生徒に対し、『教科指定』という特別補習を行って対応していますが、その担当もこの会で決めることができます」(根本先生)
 「教科担任会」や「成績分析会」で共有された情報は、「面接週間」や日々の学習指導、あるいは教科担当者による授業改善という形で随時生徒にフィードバックされていく。また、生徒に統計データや模試成績の所見を伝える際にも、「この学年全体としては今後どのような努力が必要か」「生徒一人ひとりにはどのような努力が求められるのか」といった講話を交えるなどして、生徒が自らの課題を認識できるよう留意される。
 同校の取り組みにおける「手法」に着目するならば、「面談」や「分析会」など、ありふれた手法しか見えてこないかも知れない。しかし、それらの有機的なつながりに着目するならば、「生徒の把握」→「把握した情報の共有」→「指導へのフィードバック」という確かなビジョンが見えてくるはずだ。
福島東高校「プログレス」
福島東高校「プログレス」
福島東高校が独自に作成した生活記録帳票「プログレス」。面談時に活用されるのみならず、生徒が自分の生活を律する力を養うきっかけともなる。また面談の記録も蓄積されていく。
 
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