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生徒の多面的把握が指導を変える
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学習の仕組み
 人間は誰でも「学習とはこんなものだ」という考えを持っている。これが学習観である。
 「目標のない学びは成立しないし、持続できない」とか「学力を付けるためには、授業をしっかり聞き、努力しないとだめだ」とかいった言葉はある意味で原理だと考えられてきたが、「こつこつ」「耐える」「持続」といった学習における努力主義を象徴する行動原理を失った生徒が出現している。
 自分は「これ(目標)のために頑張るんだ」という気持ち(心の動き)が学習動機なのである。北九州市立教育センターの「北九州市学校教育実態調査」(01年刊)によると、「希望する高校や大学に行きたいから」は中3で58%(「とてもそう思う」の肯定率)と高いが、「将来、社会や人の役に立ちたいから」(自尊・実用志向―役割期待)は23%、「勉強することが楽しいから」(充実志向)はわずか1.3%にすぎないとしている。
 しかも、中3で若干肯定率が上昇するものの「たくさんのことを知りたいから」(訓練志向)も含めて学習動機は学年と共に漸減している。
 その反面、「勉強がよく分かる」「難しそうな問題が自分で解けた」(学習方略)など自信(自己効力)にかかわる設問は小6・中1を底(ボトム)にして中3ではそれぞれ56%、69%(「とてもうれしい」の肯定率)に達しており、学習に対する達成感(成功体験)を準備することが学びに向かわせる決め手になっていることを示唆している。
 図2は教育心理学の研究者である藤沢伸介教授のチャートを引用したものであるが、ここでは学習を「学力を付ける」という側面に限定してコメントしておきたい。
 学習動機は「やる気」の根源だが「○○のために」という目標が定まらないと教師がいざなっても生徒の反応は鈍い。「やる気」に支えられて学習行動が起こり、その結果が成績(結果としての学力)となって表れるのである。
 一方、生徒が学びの成果を正しく把握し、評価するためには「自己効力」感が必要である。自己効力は自分に対する期待度で、その度合いが大きいほど、学習成果への評価は高まる。例えば「難しい問題が解けた」ときなどは自信が付き、新たな課題に取り組む原動力となる。
 学習行動に直結する「メタ認知」は、自分の学習行動を見守る「番人」のような存在で「まだ理解が不十分だから、類題を解いた方が良いよ」と指示してくれたり、「もっと良い方法があるぞ」と学習方略を想起させることによって学習行動を修正する役割を持っている。
図2
 
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