ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
生徒の多面的把握が指導を変える
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「なりたい自分」―目標設定
 図3は、高2を対象に調査した将来展望肯定率を97年と02年で対比したものである。
 これによると、「就きたい職業がある」を除いた3項目の肯定率は5ポイント前後低下し、高校生が将来展望―未来に対する意志決定ができにくくなっていることを示している。その反面、「能力・適性が分かる」を除く3項目の否定率(「分からない」と答えた生徒)も5ポイント前後低下していることが注目される。このことは「どちらとも言えない」生徒の増加を意味しているが、「分からない」と回答した生徒が減少したことは高校の進路指導が極めて厳しい外部条件の下で一定の成果を収めていると評価できる。
図3
 「なりたい自分」―何のために学ぶのかが不明確であれば学習に対するやる気は起こらず、授業から離脱するケースも発生する。目標の設定は、個々の生徒の進路意識の成長と共に拡散したり収斂したりを繰り返しながら次第に明確となってくる。図4は、本誌前号(2003.vol.6 p.12)で報告した「進路意識発達の8段階モデル」の段階別に、中学生の授業中の学習態度(行動)との関係を整理したものである。
 1無関心~8達成までの8段階モデルのキーワードは元々臨床心理学などで使われている(80年代後半以降)ものであるが、これを設問文形式に再構成して生徒に自己評価させデータ化した。
 このデータは横軸に「授業に集中している」(望ましい学習行動)をとり、縦軸に「授業が始まっても席に着かない」など3項目(授業中の逸脱行為)の相加平均をとり、両軸の交点を8段階モデルごとにプロットしたものである。なお、授業中の逸脱行為を示す「▲、●、■」は3項目のバラツキを示すための点線で結んでいる。
 これによると1無関心から3混乱レベルに属す生徒は、逸脱行為を否定する者が少なく、授業に集中している者も平均以下で、学びには向かいにくい状態に置かれている。4摸索から6希望レベルに属する生徒は、縦軸(逸脱行為は悪い)は30ポイント前後であるが、授業への集中度は高まっており、8達成レベルになると逸脱行為を否定する生徒が急増し、学びに向かっている。
 このように「なりたい自分」が単なる夢や憧れでなく、現実の自分や社会との調整を経て「なれる自分」(明確な進路目標)が設定されたとき、学習動機は強く働き、学習行動に移りやすいのである。
図4
 
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