ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
生徒の多面的把握が指導を変える
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学校期待と学校満足
 子どもたちは何に期待して高校に入学しているのであろうか。入学時点での期待度を横軸に、高2の10月時点での満足度を縦軸にとり、学校を7類型(進学重点校、進学校、研究開発校((SSHなど))、総合学習実践校など)に場合分けし、座標軸の中にプロットしたのが図5である。
 学校満足度を規定する因子として、インセンティブ=学びへのいざない、インタラクション=他者との相互交流、コミット=学びへの参画意識が抽出できることは、中・高校生のみならず大学生についても検証できているが、これらの因子を五つのユニットごとにまとめ、集中・分散の状態を合わせて図示した。
 グラフの右に行くほど期待度が高いが、「良い友人が得られる」で代表される友人関係はほとんどの高校で40ポイント以上のスコアを示し、教科指導に対する高期待群とほぼ一致している。これに次ぐのが学校行事と特色あるカリキュラムであるが、特に▲5で示された高校(総合学科)のカリキュラムへの期待度は極めて高く、「特色づくり」を訴求しているという点では評価できる。
 一方、上に行くほど満足度が高いが、友人関係はほぼ50ポイントを超えており「予期せぬ満足」を与えているケースも見られている。
 次に高いのが学校行事と部活動であるが、学校行事は高満足群と低満足群に2分割された。
 教科指導・カリキュラムなどインセンティブに該当する項目は満足度が低く、平均満足度に到達していないケースが圧倒的に多く、「授業内容が良い」などの教科学習は大きく二つの類型に分裂していることが注目される。
 このデータによると生徒の期待に応えていないのは教科学習にかかわる指導領域であると言えよう。
図5
 中学生の学習と高校生の学習はどう異なるのであろうか。数学と英語の場合について検証してみたのが図6である。
 これによると中3の学力レベルは「宿題があれば必ずする」かどうかによって形成されており、「毎日、予復習や発展学習をする」生徒は、数学10±1ポイント、英語12±5ポイントの間にすべての学力層が納まり、ほぼ横軸と平行になっている。
 これに対して、高校生のそれは学力レベルEからA+++に向けて「右肩上がり」となっており、受動的な学習と自主的学習の合成ベクトルによって学力レベルが弁別されている。
 したがって、高校における初期指導は、自律的な学習行動が取りにくい新入生を予習―授業―復習を軸にした学習行動に転換させることがその基本となる。これが「中学生を高校生にする」というメッセージとして発信されているのである。

図6
 
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