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生徒の多面的把握が指導を変える
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 「転換」のキーワードとなるのがメタ認知と学習方略である。再び図2に着目すると、一人ひとりに備わったメタ認知は、必要とする「方略」を呼び起こしてくれるのであるが、学力レベルを弁別する学習方略はそれぞれの学力到達度水準によって異なることが次第に明確となっている(詳細は本誌前号2003.vol.6p.14~15参照)。特に、教師が指導の中で経験的に感じる「学力の壁」が、データ上にも明確に示されていることは注目される。ここでは、四つの「壁」それぞれについて、それを乗り越えるための学習方略についてコメントしておきたい。

●全国偏差値48の「壁」
 宿題があれば必ずする、授業で教師の話すことの要点がノートに取れる、といった学習方略が身に付く。言い換えると、授業や教科書(プリント)に示された「解」のモデルが理解できるようになる。

●全国偏差値58の「壁」
 宿題がなくても毎日3教科3時間以上の予復習ができ、今日学んだ知識を体系化(モジュール化)して取り出しやすく整理する、と共に明日、何を学ぶのか、「分からない点」をはっきりさせておくことができる。

●全国偏差値63の「壁」
 授業内容の定着度を上げるため、「分からない点」を仮説を立てて「解」を求めていく。言い換えると、発見的な理解ができるようになることが決め手となる。

●全国偏差値68の「壁」
 体系化(モジュール化)された知識を絶えず取り出し、知識と知識の関連性を追究し、仮説や類推によって「解」に近付く学習方略が定着することが決め手となる。
 「中学生を高校生にする」というメッセージは個々の生徒に当てはめた場合、例えば学力レベル一つを取ってみてもアドバイスの方法は同じではない。生徒の多面的把握を短期間で可能とするためにも、Chapter1で取り上げた指導法を、各校の状況に合わせて再検討する必要があるのではないだろうか。
 なお、学習上の悩みを小社「スタディーサポート」(02年度)のデータに依拠してみると、国語で「学習法が分からない」という訴えが学年のいかんを問わず40±4%のレベルで見られている。
 これが国語の自主的学習を妨げている根源的な問題と言えるのであるが、静岡県立浜松西高校の事例(現代文)が普遍的な学習方略を示していると思われるので、図7に紹介する。各教科の取り組みの参考にしていただきたい。
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 その重要性にもかかわらず、まだ研究が立ち後れている部分も多い「生徒把握」。特に、集めたデータをどのように活用するのかについては、多くの学校が研究中だと思われる。
 なお、今号の「指導変革の軌跡」では、生徒把握を通じた指導変革の事例として、静岡県立浜松南高校の事例を紹介している。併せて目を通していただきたい。
 
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