ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
新課程のスタート状況と今後の展望
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「成果の発表」を各校とも重視
 「総合学習」では、「3つのE」を学習活動の中に組み込み、多様な活動のバランスを取ることが重要とされている(本誌01年度2月号「点から線の教育へ」参照)。3つのEとは、探究(Explore)・交流(Exchange)・表現(Express)の活動を指す。
 資料13は、「総合学習」を先行実施した高校が、学習の中で重視した活動を、「大変重視した」「まあ重視した」の割合で示したものである。
 探究活動では、「実験や観察」「地域の施設に行って調べる活動」が4割程度であることを除いて、いずれも8割程度の高校で重視されていることが分かる。
 とりわけ、「考えを深めさせる活動」「データの整理やレポート作成などのまとめ」は多くの学校で重視して取り組まれており、単に調べるだけでなく、その結果の意味することを考えさせたり、きちんと文章にまとめさせる活動が心掛けられていることが分かる。
 交流活動では、「討論や話し合い活動」の割合はほぼ7割だが、「外部講師との活動」や「地域の人の役に立つ活動」「学校外の人との交流」は相対的に低く、どちらかと言えば、校内に限定された活動が主流となっているようである。
 表現活動では、「研究成果の発表」が非常に重視されている。成果発表の機会を設けることは、生徒に活動の着地点を示すことで学習への意欲を高めるだけでなく、生徒同士が相互に学び合い、刺激し合う場となる意味においても重要と考えられる。
また、評価においては、約7割の高校で「生徒による自己評価や生徒同士の相互評価」が重視されている。
資料13


多くの高校が成果に対して高い評価
 では、「総合学習」を先行実施した高校では、その成果をどのように捉えているのだろうか。
 資料14は、「総合学習」の教育的効果を問う各設問項目への回答について、「どちらでもない」という中立的回答を除き、肯定的回答の割合と否定的回答の割合を示したものである。ただし、成果は具体的な取り組みとの関係において見るべきものであり、今回はデータ数の制約でその関係を見ることはできないため、資料14の結果はあくまで様々な取り組みの成果を平均的に見たものであることに注意したい。
 とは言え、この資料において、すべての項目で肯定的回答が否定的回答を上回っていることには注目する必要があるだろう。とりわけ、「生徒の自己理解や進路展望が深まってきた」という項目について効果を感じている高校は8割にも及ぶ。このことは、高校における「総合学習」が、進路学習を中心に置いていることと表裏の関係であり、その成果を端的に反映しているものと言えよう。生徒の職業や勤労に対する意識や理解の深まりについても約6割、生徒の意欲や主体性の高まりについても5~6割の高校が成果があったと考えている。
 他方、学習意欲の向上や学習スキルの習得などを通じて、「総合学習」を学力向上につなげようと試みている高校も多いが、今回のアンケートで「教科学習における生徒の総合的な知識や理解が深まってきた」と回答する割合は34%にとどまった。しかし、この数値は、「総合学習」が学力向上にも寄与する「可能性」を示す数値としては十分高いと言えるのではないだろうか。
 事実、取材で訪れた高校で、「総合学習」によって学習に目覚め、教科の成績も著しく向上したという生徒の話を耳にすることは少なくないし、学校全体の学力が向上したという事例も生まれている。
資料14
 
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