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保護者向け進路シラバスによる導入期の情報提供
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保護者向け進路シラバスの必要性
 しかし、「保護者に期待する役割をしっかり伝える」と一口に言っても、それは必ずしも簡単なことではない。現に、「学校の指導を踏まえた上で子どもと接したいのはやまやまだが、具体的にどのような行動をとるべきか分からない」という保護者の声はかなり広範に聞かれている。また、「学校の指導方針自体がよく見えない」という声も少数ながら存在するのが現実である。もちろん、ほとんどの学校では入学者オリエンテーションや面談の実施といった対策を講じているわけだが、年に4~5回という機会の少なさでは、「保護者は今、何をすればよいのか」という学校のメッセージを時期を失さず伝えるのは難しい。しかも、日常業務との兼ね合いから、今まで以上に面談の回数を増やしたり、新たに家庭訪問を実施するのは困難である。「限られた時間の中で、どのように保護者に対するメッセージを体系的に伝えるのか」というテーマが、多くの学校にとっての課題と言える。
 この課題に対する一つの施策として挙げられるのが「保護者向け進路シラバス」の作成である。近年、授業進度や評価規準を示した生徒向けのシラバス作成が各地で本格化しつつあるが、「保護者向け進路シラバス」も基本的にはそれと同様の構成で作成し、活用することが考えられる。つまり、3年間を通じた学校の指導の見取り図を伝えた上で、各時期の到達目標を提示、そして、それに応じて保護者に行ってもらいたいこと、言わば保護者の行動目標を体系的に示すのである。このような保護者向け進路シラバスの一例を資料に示したが、これは、進研ゼミ高校講座が、保護者向け進路情報誌で最初に伝えたい情報として制作したものである。
 このようなシラバスを作成するメリットとしては、主に次の2つが挙げられる。
 一つ目は、「どの時期に何をしてほしい」という学校側のメッセージが体系的に伝わることによって、保護者が学校の指導とのかかわりを意識しながら子どもと接することが可能になる点である。保護者会、三者面談など「点」の取り組みだけでは、学校側のメッセージはその場限りの断片的なメッセージとしてしか伝わらない。保護者向け進路シラバスによって体系的な生徒育成の見取り図が示されるなら、例えば「今はまだ高校生活導入期だが、次の文理選択の時期を見通した接し方が必要だ」などと、保護者が連続的な見通しを持って生徒と接することができるようになるだろう。
 さらに、家庭における保護者の活動と、学校における教育活動が密接につながっていることを示せれば、指導の効果は一層上がる。例えば、学校で進路学習を行う時期に合わせて、家庭では進路に対する意識付けを行うようシラバスに明記しておけば、昨今問題となっている進路意識の育成もよりスムーズになるはずだ。
 二つ目は、生徒育成に占める家庭の重要性そのものを、シラバスによって示すことができる点である。例えば、職業観の育成一つとっても、学校の指導だけで完結する部分はほとんどない。生徒が職業を意識すること自体、両親や親類の職業観や、家庭での体験、家庭で見るテレビ番組などによって触発されるケースが非常に多いのである。また、基本的な生活習慣や学習習慣の確立など、家庭との協力なくしては難しい指導も数多い。これらを保護者に自覚してもらうこと自体、シラバスを作成する大きなメリットと言えよう。
 では、実際に03年度新入生を迎えるに当たり、学校はどのようなメッセージを保護者に伝えるべきなのだろうか。高校生活導入期に特に伝えたい項目について、シラバスを参照しつつ考えてみたい。
 
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