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SIの明確化がR-PDCA サイクルの基点
――学校のビジョン、さらに言えばSIを明確にしていくことが学校の自己点検・評価を行う上で重要だというご指摘ですね。では、その点も含めた学校の自己点検・評価の流れとしては、どのような手順が考えられるのでしょうか?
小松
最低限必要なのは、(1)育成すべき生徒像を踏まえた学校のビジョンを描き、(2)その実現に向けて何を行うかを決めて実行し、(3)それが実際にできたかどうか検証する、というR-PDCAのサイクルをきちんと回すことです。そのためにも、学校の総責任者である校長がリーダーシップを取って学校のビジョンを明確にすることが重要なのです。
―リーダーシップと聞くと、いわゆるトップダウン型の学校経営を連想してしまうのですが…。
小松
そのように固定的に捉える必要はないと思います。例えば、主任先生クラスの意識が高い学校ならば、思い切った権限委譲を行い、ボトムアップ型の自己点検・評価を行うことも適切な方法の一つになるでしょう。自己点検・評価を通じて学校を活性化していく上で大切なのは、学校のビジョンを実現するためにどれだけ具体的な目標を分掌ごとに設定できるかです。そして、その目標を達成するために必要なのは、教師全員の責任感と一体感を引き出すことです。リーダーシップの取り方も、学校特性に応じてトップダウン、ボトムアップをうまく組み合わせる形が望ましいでしょうね。
数値評価はアウトプットだけでなくアウトカムも重視する
――学校の自己点検・評価の具体的な手法を考える際の問題として、数値目標の設定があります。しかし、教育効果を数値化することはできないという考え方もある通り、実効性のある数値目標の設定は容易ではないと思われます。どのように数値評価を考えればよいのでしょうか?
小松
確かに、生徒の人格の成熟度や学力向上の質など、教育には数値評価で測れない成果があるのは事実です。たとえ「○○大学に□名の合格者を出す」といった目標を掲げ、それを達成したとしても、必ずしも目標と計画に因果関係があったとは言えませんし、最も大切な観点である「生徒を3年間でどれだけ伸ばしたのか」を踏まえた評価にはつながらないでしょう。しかし、学校の自己点検・評価は「学校教育の質を向上させるためにある」という大前提を見失わなければ、実効性のある数値目標を設定することは可能です。例えば、数値評価の対象として、教育活動の成果だけではなく、その成果を達成するためのプロセスに目を向ける、というのも一つの手です。「授業の進度・内容をどれだけ計画通りに進められたのか」「補習をどれだけ開講したのか」「遅刻率をどれだけ減らしたのか」といった指標ならば数値評価が可能ですし、このような指標ならば「学校教育の質の向上につながったかどうか」という視点での総括が可能です。アウトプット(数的結果)だけではなく、アウトカム(生徒、保護者の満足度などの成果)も重視した数値評価を模索することが、一つのポイントになると思います。
――今後、自己点検・評価に取り組む学校はどのような姿勢で臨むとよいのでしょうか?
小松
学校評価と聞くと、学校にとって全く新しい取り組みに感じられるかも知れませんが、決してそうではありません。学年や教科など、従来から分掌ごとに行われてきた反省会や年度総括は、紛れもなく学校評価の一部です。ですから、スタート時の考え方としては、まず、従来の取り組みを体系化して、その上に学校全体の教育活動を見据えた評価を摸索していくのが適切なのではないでしょうか。それが最終的に、自己点検・評価を、無理なく学校活性化に生かす第一歩だと思います。
――今日はお忙しいところありがとうございました。
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