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シラバス作成をどのように進めるか?
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見えてきた課題と「使えるシラバス」を目指した創意工夫
 しかし、詳細な内容のこのシラバスも、運用するうちにいくつかの問題点が浮上してきた。初年度から数学担当としてシラバス作成に携わってきた洲鎌真先生は、特に大きな問題として次の二つを挙げた。
 「一つは、教科特性によって、当初のフォーマットでは指導に使いにくい面があるという問題。もう一つは、生徒がシラバスをうまく使いこなせていないという問題でした。特に後者の問題はシラバスの存在意義そのものにかかわることですから、早急な対処が求められました。そこで、運用二年目からは『最低限、これだけは教えなければならない』という点は確実に押さえるという方針を共有した上で、各教科ごとに再度使いやすいフォーマットや活用方法を考え直すことにしました」
 では、実際にどのようにシラバスが改定されていったのか、実例に即して見てみよう。

(1)教科特性を活かしたフォーマットの改訂
 まず、教科特性に応じたフォーマットの改定について見てみよう。98年度当初は授業内容や使用教材を1コマごとに示す形だったが、特に英語科の指導において、このフォーマットは大きな問題となった。
 「一つの文章を数時間掛けて読みこなしていく英語の場合、『1時間ごとにどこからどこまで読む』という形で進度を示すのは現実的ではありません。ですから、まず初めに変更したのは、1時間ごとに区切られていた授業の進度を、教科書のレッスン単位に変更することでした。また、当初は授業内容を文章で示していましたが、生徒や教師の間から『記述が具体的でなく、読み取りにくい』という意見が出されていました。そこで、授業内容を、『~という英文の質問に英語で答えられるようになる』という具合に、具体的な英文で示すようにしたのです(資料4)」(仲吉先生)
資料4
 だが、この方法を採るにはクリアすべき課題も多い。なぜなら、授業の内容をより具体的に示すためには、教師間での「ミニマムコンセンサス」の形成をより厳密に行う必要が出てくるからだ。そこで、英語と同じく、学習内容を具体的な数式にして示す方法を模索中の数学では、まず、一部の学年のみが試験的に記述方式を改め、それを検証する中で「ミニマムコンセンサス」を段階的に形成していこうとしている。
 「授業方法に縛りをかけず、授業内容は揃える。この問題はそれほど単純なことではありません。数学科では、まず2年文系のシラバスについて試験的にこの方式を導入し、今後数年間を掛けて検証・修正していく予定です(資料5)」(洲鎌先生)
 もっとも、すべての教科で大規模な改定が必要だったわけではない。国語ではほぼ当初のままの形でシラバスが運用されている。 「国語の場合、シラバスのフォーマットを見直すよりも学習内容の精選や、学習項目の記述を精緻化する方向で改善を進めました。例えば、センター試験の関連問題を詳しく提示したり、最終的な入試学力の育成に向けて、3か年を通してどのような単元配置が適切か、という視点で改定を行ってきました」(知念賢世先生)
資料5
 
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