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通話やデータ通信を超える携帯電話の新たな可能性
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新サービスの提供で付加価値の高い収益構造を作り出す
 99年2月、NTTドコモの「iモード」登場により、携帯電話でWebページの閲覧やEメールなどのデータ通信が可能になったことで、携帯電話の可能性はさらなる広がりを見せた。そして現在、携帯電話はより高速で大容量のデータ通信が可能な「第三世代」に移行しつつある。では、2010年頃まで続くと思われるこの「第三世代」の下、携帯電話市場はこれから先も、右肩上がりの成長を続けることはできるのだろうか。
 現在、日本人の4人に3人は携帯電話を所有しており、90年代のように年間1000万件単位で加入件数が増加するようなことは、もはや考えられない。加入件数という点で見ると、市場はほぼ飽和状態に達していると言える。しかし、もっと視野を広げて市場全体を見渡せば、飛躍の可能性はまだまだある。
 一つは、携帯電話により多くの機能を付加し、通話料やデータ通信料以外の収入を増やしていくことである。例えば、外出時に持ち歩く財布やクレジットカード、ポイントカード、定期券、携帯ラジオ・テレビなどの機能を携帯電話に取り込んでいくのだ。キャッシュを持たずに財布代わりに携帯電話を使う、ポイントカードを使わずに携帯電話を介してインターネットサーバーにポイントを貯める、携帯電話で音楽を聴く――。つまり、加入件数は増えなくとも、携帯電話に新しいサービス機能を付加することで、新たな収益源を確保するのである。


「モバイル」と「ワイヤレス」の視点から新たな市場を創出
 もう一つは、人間以外の市場を見いだしていくことである。携帯電話には「モバイル」と「ワイヤレス」という二つのキーワードがある。「モバイル」は簡単に言うと「動き回れる、持ち運びができる」ということ。「ワイヤレス」は必ずしも動く必要はなく「無線でつながっている」が条件になる。この二つの観点から、人間同士のコミュニケーション以外にできることを考えてみるのである。
 まず、「モバイル」という観点から考えると、例えば自動車は国内に8000万台ある。また、犬や猫などペットは2000万匹いる。自動車だけでも、人間とほぼ同じ規模の市場が存在することになるのだ。「動くもの」という視点で市場を見渡して、それに対してどのようなサービスができるだろうかと考えるわけである。
 自動車であれば、移動先で急に必要になった物があった場合、それを一番近くで入手できる場所をGPS(【注2】参照)で探し出す。さらに、音声を認識する装置と組み合わせれば、手で操作することなく車に話し掛けるだけで情報を得ることができる。またペットであれば、これもGPSを利用することで迷子になった犬・猫を探し出し、飼い主に知らせたり保護したりするサービスも考えられる。
 一方、「ワイヤレス」では、コンピュータ同士、家電製品同士というように、機械と機械が人間を介さずに情報のやり取りをする「マシン・トゥ・マシン・コミュニケーション」の概念が重要になる。例えば、いろいろな場所に地震を検知するセンサーを設置して、地震の規模などの情報をリアルタイムで収集したり、幹線道路の渋滞ポイントにCCDカメラを設置して、交通渋滞の映像を入手したりする。そしてそれらのデータを、人の手を介することなく人間に分かりやすい形にして携帯電話やパソコンに送るということも考えられる。こうしたサービスが「マシン・トゥ・マシン」の技術で可能になりつつあるのだ。
【注2】GPS(Global Positioning System) 人工衛星からの電波により緯度・経度・高度を測定し、利用者の現在地情報を入手する全地球測位システム。一般には、航空機や船舶等の航法支援、カーナビゲーションなどに利用されている。
 
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