ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
学校のノウハウの共有と伝承を図る
荒瀬克己
京都市立堀川高校校長
荒瀬克己
Arase Katsumi
教職歴26年目。同校に赴任して19年目。途中、教育委員会に3年勤務。「『しなやかさ』と『したたかさ』を持った生徒を育てたい」

大江加津雄
京都市立堀川高校教頭
大江加津雄
Oe Kazuo
教職歴24年目。同校に赴任して11年目。「それぞれの子どもの個性に応じた指導ができる教師になりたい」

川浪重治
京都市立堀川高校教諭
川浪重治
Kawanami Shigeharu
教職歴24年目。同校に赴任して11年目。企画部長。「教科で付けた力を、世の中で生かせる生徒を育てたい」

奥山誠
京都市立堀川高校教諭
奥山誠
kuyama Makoto
教職歴22年目。同校に赴任して5年目。研究開発部長。「本校から世界的な人物が輩出するような指導をしたい」
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学校現場の事例(1) 京都市立堀川高校
授業改革を通じて教育課題の共有を進める
学校改革の原動力となった指導ノウハウの向上
 1999年より、大胆な学校改革に乗り出した堀川高校。改革開始後3年で国公立大合格者を100人以上も伸ばすなど、現在その成果は、多くの学校の注目を集めている。この間に実施された取り組みは多岐に渡るが、中でも、同校の教師が互いの授業スキルを絶えず交換し、指導ノウハウの共有化に努めてきたことは注目できよう。荒瀬克己校長は、この点にかける意気込みを次のように語る。
 「授業というと、これまではどうしても個人単位での改善に終始しがちでした。しかし、今後はそれでは通用しません。各教科がスキルの向上に努めるのはもちろん、そのノウハウをすべての教師が組織的に発揮することが求められていると考えています」
 このような認識の下、同校が一貫して追求してきたことが一つある。それは、教師が互いの授業について、忌憚なく意見を言い合える環境を築くことだ。
 「『進路のしおり』やシラバスの作成など、ノウハウを共有するためのシステムづくりを進めることはもちろん大切ですが、それ以前に、教師が本気でぶつかり合って、互いの指導を見直していく必要があると考えています。『教科としてのノウハウ』が確立するのは、その過程があってこそだと考えています」(荒瀬校長)
 では、こうした目的を達成するため、同校ではどのような取り組みを行っているのだろうか。以下で詳細に見ていきたい。


内部の目で互いのノウハウを共有する「授業公開期間」
 まず、一つ目の取り組みとして挙げられるのが「授業公開期間」の実施である。この取り組みは、いわゆる互見授業であるが、大江加津雄教頭はスタート時の状況を次のように語る。
 「元々この取り組みは、教育実習生に現場のノウハウを知ってもらおうと始めたものでした。しかし、せっかくの機会ですから、本校の教師同士が互いの授業を研鑚する場として位置付けました。以前は年2回の実施でしたが、03年度からは毎月の実施としています」
 期間中、教師たちは自分の空き時間の中で、自由に他の教師の授業を見学することができる。しかも、全校一斉に実施するので、他教科や他学年の授業を見ることも可能だ。企画部長の川浪重治先生は、この取り組みを高く評価する教師の一人である。
 「新任の教師はもちろん、ベテランの教師にとっても指導力を向上させるための貴重な機会になっていると思います。特に、理科や地歴・公民では、英語や数学と違って、シラバスや授業計画を使った科目間の目線合わせが難しい面がありますから、直接互いの授業を見合うことの意味は大きいと思います。『あの先生はいい指導をしているな』と思ったら、教科会議で互いに情報を交換し合います。教授法や、生徒に対する質問の仕方などについては、他教科の授業も参考になりますからね」
 このような取り組みが行われる場合、教師の所見は書類にまとめたり、分析会を開いたりして回収されるのが一般的だ。もちろん、同校にもそのようなシステムは存在し、授業の質の向上に向けて有効に活用されている。だが、それ以上に着目すべきは、同校には気付いたことがあり次第、直接教師同士が意見を言い合える環境があることだ。
 「授業の所見を書き込むための用紙も利用していますが、それ以上に、教師同士が直接意見を交換するケースの方が多いですね。職員室でも廊下でも、教師同士が授業の進め方を議論するような光景がよく見られます」(大江教頭)
 
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