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鹿児島県立大島高校教諭 |
泊弘光
Tomari Hiromitsu
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教職歴10年目。同校に赴任して6年目。「生徒の前で教師は役者。シーンに応じて色々な役割を演じ分けたい」 |
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学校現場の事例(2) 鹿児島県立大島高校
校内LANを使った
分掌、授業ノウハウの共有と伝承 |
異動サイクルの早期化が取り組みのきっかけ |
大島高校が校内のノウハウ伝承について問題意識を持ち始めたのは、1990年代末のことだった。同校の情報科主任を務める泊弘光先生は、その背景を次のように語る。
「平均7年程度と、教師の異動サイクルが比較的早い鹿児島県にあって、特に島嶼(とうしょ)部に位置する本校では、教師の異動サイクルが極端に早くなっていました。何らかの形で、学校のノウハウを蓄積し、伝承する仕組みが必要だという認識が教師の間に高まっていました」
こうした問題を解決するには、まず書類による情報の蓄積や共有化を図るのが一般的だ。だが、同校は校内に張り巡らせたLANを用いた情報管理を選択した。
「教科や分掌の教室など、校内の各所に置かれたパソコンをLANで結び、情報を入れる共有フォルダを設けました。これなら、『誰でも、いつでも・どこでも』同じ情報を共有できますし、新たな情報をストックすることも容易です。もちろん、操作に習熟するまでの苦労はありましたが、今ではほとんどの教師が、当たり前のようにこのシステムを使いこなしています」
パソコンを活用したこのシステムがどのように機能しているのだろうか。 |
校務分掌をそのまま生かしてノウハウをストック |
同校のLANシステムには、各教科や分掌の部屋など、校内各所からアクセスできる。そして、このようなシステムを稼動させる上で重要なのが、どこにどのデータが蓄積されているのか明確になっていることだ。その点、同校は極めて明快な方法を採用した。
「情報を整理するためのフォルダの配置には、既存の校務分掌をそのまま応用しました。これなら、生徒の進路に関することなら『進路指導部』のフォルダ、カリキュラムや授業計画のことなら『教務部』のフォルダという風に、直感的にアクセスできます」(資料1) |
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各分掌のフォルダには、年間活動計画から、各行事で使ったプリント類、そして年度末の反省に至るまで、まさに各分掌の活動履歴そのものが蓄積されている。新任の教師はこれらを参考にすることで、あるいは自分で新年度の情報を付け加えていくうちに、いち早く各分掌の活動に馴染むことができるわけだ。
とは言え、これらの膨大な情報を一気に蓄積しようとしてもできるものではない。そこで同校ではLANを、「情報を蓄積するためのシステム」としてではなく、「仕事を進めながら、自動的に情報が蓄積されていくシステム」として構築している。
「LANについては、情報を蓄積しておく場所としてではなく、仕事の履歴を消さずに残しておく場所、として考えています。ですから、仕事のデータを残しておくために、余計な仕事が発生するようなことはほとんどありません」
こうした徹底的な履歴の蓄積は、各教科のフォルダについても同様である。
「例えば数学科のフォルダには、年間指導計画や小テストの問題、さらに、定期考査の成績を小問ごとに分析した資料なども蓄積されています。3年間を掛けて、学校としてどのような指導をしているのか、あるいは、学校として生徒に求める学力レベルはどのくらいなのか、すぐにつかむことが可能です」
実際、同校に赴任してきた教師は、赴任1日目にLANに接続することになる。本格的に職務をスタートする前に所属分掌や教科の履歴を見られるので、具体的な指導のイメージを持ってから、現場に向かうことができるのである。 |
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