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生徒情報の蓄積が生徒の多面的把握に生きる
このシステムは分掌間の情報共有にも威力を発揮している。各分掌のフォルダに蓄積された情報は、基本的に他の分掌の教師も自由に見ることができるため、分掌を越えた生徒把握や指導改善が可能になるのだ。
「例えば、部活動の顧問が生徒の成績を見て、大会出場を優先させるか授業を優先させるかを判断したり、教科担任が互いに担当する生徒のデータを見合って、授業の進度や課題の分量を調整するような動きにもつながっています」
そんな中から生まれた具体的な成果の一つが、「生徒情報」というフォルダの充実だ。元々このフォルダは、生徒の名簿を入れておくためのものだった。だが、様々な分掌の教師たちが、自らの目で見た生徒の情報を次々に書き加えていった結果、生徒の過去の模試成績の推移や課外活動の受賞歴、進学志望先の変遷なども知ることができるようになった。そして今では、生徒の多面的把握を実現するためのツールとして、面談などに活用するケースも生まれてきている。
「分掌の壁を越えた情報共有の重要性は、どの教師も認識しています。問題なのは、たとえ欲しいデータがあっても、『いつでも・すぐに』取り出せない状況にあったことです。LANを活用することで、時間、場所に対する制約が相当軽減されたのではないかと思います」
個人レベルのノウハウ交換を推進する仕掛け
分掌レベルでのノウハウの伝承に加え、個人レベルでのノウハウ共有を進める仕掛けも、同校のLANには組み込まれている。分掌のフォルダとは別に設けられた「個人フォルダ」がそれだ。
「このフォルダは教師同士のノウハウ交換を狙ってつくりました。基本的には『他の先生に見てもらいたいものは何でも入れておく』というフォルダです。ですから、自分で工夫して作った授業プリントや、事務管理のための書類、あるいは、他の先生にも伝えたい生徒の情報などが入っています。『あの先生のプリントは分かりやすい』といった話を生徒から聞いて、教師が互いのプリントを見せ合ったりすることが普通に行われています」
このような情報の共有を通じて盛んになったことの一つが、情報の二次利用である。例えば、ある教師が作成して好評を博したプリントがあったら、それを他の教師が改良し、さらにクオリティーの高いものに仕上げていくのだ。だが、このような状況が、教師にある種の覚悟を要求するようになってきたことも事実だ。
「他の教師のノウハウを簡単に参考にできる状況は、間違えば、指導の画一化にもつながりかねません。他の教師のノウハウをそのまま使うのではなく、いかに自分のものとして高めていくか、教師一人ひとりが強く意識していかなければならないと思います」
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