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最悪の状況設定がその後のスムーズな対応を可能にした
以上、同校の01年度以降の動きについて見てきたが、九州大の入試科目の変更や国公立大医学部入試の動向が見えないといった中で、同校はあえて自らに厳しい条件を設定し、それを貫いている。ここで注目すべきは、文系のコース設定などに見直しがあったにもかかわらず、同校では対応策について議論が紛糾しなかったという事実である。その背景について、井上哲秀先生は「01年度に最悪の事態を想定していたことが大きい」と指摘する。
「01年度に最も厳しい条件を想定して原案を作っていたので、その後に調整が必要になった場合でも、ほとんど教科内での調整で済みました。『生徒の幅広い履修可能性を保証する』という共通理解が、新課程対応の議論を通じて醸成されていたことが大きかったと思います」
こうした対応の結果、「総合的な学習の時間」が科目の読み替えなどに使われず、充実した活動が可能になっていることは大きな成果と言える。特に同校の場合、「新火曜時制」と銘打ち、火曜日の1、2限を例外的に50分授業とし、「総合学習」とLHRの時間に充てているが、以前に比べ、活動内容が充実してきているようだ。
「場合によっては、2時限連続で『総合学習』を設定できるので進路講演会などが格段にやりやすくなっています。また、校外での研究・調査など、従来は時間の問題でできなかった活動も可能になり、確実に生徒の意識啓発につながっていると思います。実際、進路志望調査などを行うと、従来は地元志向の生徒が多かったのですが、現在は、自分の『本当に学びたいこと』を優先する生徒が増え、志望先が全国に広がるようになってきました。進路意識の啓発を通じて、さらに生徒の目を広く全国に向けさせたいと考えています」
同校が、03年度対応を機に、従来の「九州大」に加え「全国区」を受験指導の照準に加えようとしていることは既に述べたが、「総合学習」は、そのための有効な仕掛けとして機能しつつあるようだ。
以上、同校の対応を見てきたが、その根底に流れているのは、「細かな対応は変えても、一度決めた共通理解は貫く」という姿勢である。大局を見失わずに新課程対応を進める上で、その示唆するところは大きいのではないだろうか。
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