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65分授業に対する耐性がない生徒への働き掛け
一方、同校のカリキュラムのもう一つの特色である65分授業を機能させる方法についても、03年度に向けて研究が進められた。特に、「長時間の授業に対する耐性がない」と言われる03年度新入生に対し、どれだけ知的な刺激を与え、学習意欲を掘り起こしていくかは大きな課題と言えた。そこで同校では03年度より、当初の予定にはなかった新入生オリエンテーションを、始業式前の春休みのうちに実施することを決定した。この取り組みに中心的な役割を果たした石若達弥先生は、取り組みの内容を次のように語る。
「新入生オリエンテーションでは、授業を体験させると共に、授業で分からない点はすぐに質問に来るよう意識付けました。と言うのも、新課程への移行に伴い、中学校間に学習内容の差が出ているので、一斉授業では完全にフォローし切れない生徒が出る可能性があるからです。実際、数学などでは、例年の2倍以上の生徒が、放課後に職員室を訪ねるようになりました。また、各教科のガイダンスなども積極的に行い、学習に向けた知的な動機付けにも留意しました」
この取り組みについてもう一点注目されるのは、それが「新21世紀委」の提言に基づいて実施されたことだ。同校では、01年度に「21世紀委」を一旦解散、その上で「新21世紀委」を立ち上げ、学校改革を進めるための提言機関としているのだ。
「カリキュラム運用の実務面を『教育課程委員会』に引き継いだ01年に、『21世紀委』は、より大局的な観点から学校改革を推進するための『新21世紀委』に生まれ変わりました。現在は、新課程対応に関する各種提言の他、分掌の改組や学校の特色づくりに関する研究など、2週間に1回のペースで話し合いを続けています」(石若先生)
このように「21世紀委」は、新課程対応を機に進んだ学校改革を継続的に実施するための機関として、形を変えて現在も機能しているのだ。
各種アンケートに基づいて「新21世紀委」が提言
以上、同校が01年度以降に直面した2つの課題について見てきたが、課題の洗い出しや対策が迅速に行われてきた背景には、各分掌・委員会が機会を見てアンケートを実施し、積極的に校内の情報収集に努めてきたことが大きく貢献している。例えば、先に触れた年度末補習の次年度への持ち越しは、01年度に教務部主導で行われたアンケートの結果を反映したものであるし、「新21世紀委」が出す各種提言の裏付けにも、同委員会が実施したアンケートの成果が生かされている。中でも、進路指導部が生徒の卒業時に実施しているアンケートは、新課程対応を進める上で大きな役割を果たしてきたようだ。
「アンケートでは、生徒の家庭学習時間などのデータを収集するのはもちろん、カリキュラムに対する改善要望も調査の対象にしています。これらの成果がきちんと教師間で共有されていることが、授業改革やカリキュラムの運用改善を進める上で役立っていると思います」(野口先生)
実際、03年度カリキュラムでは、3年次の後期を自由選択型の特別編成授業に充てているが、そのきっかけの一つは、アンケートに寄せられた「生活科学、医療系を希望する生徒に応じたコースがない」という声だったと言う。
新課程の様々な課題に直面しつつも、その対応策に取り組んできた大手前高校。同校の取り組みは、カリキュラムが検証・改善を経て初めて生きるものだということを示す好例と言えるのではないだろうか。
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