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中学校の現場から(1) ~保健室~
評価のない場所を求める中学生
孤独を紛らわすために保健室に集まる中学生
大阪府交野(かたの)市の閑静な住宅街に建つ市立中学校。同校の保健室は、休み時間ごとに15~20人の生徒で溢れ返る。中には毎日のようにやってくる生徒もいるという。だが、病気やケガで訪れる生徒は2割にも満たない。ほとんどの生徒が先生と話をするためだけにやって来るのだ。
「先生、先生!」
保健室内には生徒たちの元気な声が飛び交う。生徒は養護教諭の先生に話し掛けるのに必死だ。先生が他の生徒の処置をしていても横から割り込んでくる。先生が他の生徒と話し込んでいようものなら「あー、無視した」と口をとがらせる。生徒たちの視界には、先生の姿しか入っていないかのようだ。
養護教諭のO先生は次のように述べる。
「中学生はものすごく忙しいんです。授業が終わると部活動に出て、それが終わると大抵の生徒が塾に行きます。塾から帰る頃にはもう家族の方たちは寝ている場合もあって、家族の団らんを持つ時間もありません。ストレスを発散させる場所がないんですね。だから、誰かに自分の話を聞いてもらいたいという思いが強い。その結果、皆が先生を独り占めにしようとするんです」
中学校の保健室の様子
以前はほとんどが外科的な治療 現在は内科的治療が増えている
一見、保健室でおおらかに振る舞っているように見える中学生。だが、他人との接し方を測りかね、悩んでいる姿もうかがえる。同校生徒指導主事のM先生は次のように述べる。
「多くの生徒は、自分の言いたいことを一方的にしゃべるばかりで、こちらの言うことは聞かないんです。とにかく自分の気持ちだけを分かってもらいたいんですね。相手の立場に立って考えることができないので、相互のコミュニケーションは下手な生徒が多い。そういう生徒が集まっても、お互いに話を聞こうとしないわけですから、『あの子は、私の気持ちを分かってくれない』という風になってしまうわけです」
また、日々の保健室業務の内容も変わってきている。以前の保健室での業務は、ケガをした生徒の外科的治療などが多かったが、近年は頭痛や腹痛、体調不良など、内科的な症状を訴える生徒が多いという。家庭での孤独や友人とのコミュニケーション不全など、精神的な悩みが内科的な症状となって現れているのではないかと、O先生は推測する。
子どもは社会を映す「鏡」 生徒の心を育てる教育が必要
中学生にとって、保健室とはどういう場所なのだろうか。O先生は次のように言う。
「今の中学生は、『ホッとできる場所』を探しているんだと思います」
学校にいれば、授業はもちろん、掃除やクラブ活動も評価の対象になる。日々の生活の中で、唯一、評価と関係のない保健室が生徒にとっては安らげる場所になっているというのだ。
このような中学生に対してO先生は「心を育てることが大切」と強調する。
「子どもたちにとって一番大切なことは、社会に出てもくじけない心やたくましさ、何事にも負けない心を身に付けていくことだと思います。そういう心が未成熟な生徒が増えているような気がしています。結局、子どもたちは社会を映す鏡です。社会環境の変化や家庭の雰囲気は、そのまま子どもの考え方や行動に反映していきます。保護者も学校も一丸となって、生徒の心を育てていくことが大切だと思います」
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