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生徒の自主性を育み効果的な65分授業を展開
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事実、同校の
多くの先生は、65分間を活用して授業の中で様々な工夫を実践している。例えば地理を担当している後藤浩利先生の授業は、まず5分間の小テストから始まる。内容は、2年生には1か月前に教えた教科書の範囲から、3年生には2年次の学習内容に戻った時点から順次出題している。小テストの後は講義に入るが、日によっては白地図などを利用した読図演習など、ワークの時間をとる場合もある。
 「地理は入試では、農業、工業、地形図など様々な分野の知識を絡めた総合問題が多く出題されるので、授業と並行して小テストなどで反復学習をさせることは、重層的な理解力を獲得する上で効果的です。またワークも読図力を養うために重要です。65分授業なら、小テスト、ワークを絡めても、その後に講義を行うだけの時間的余裕があるという利点は大きいですね。これが50分授業だと、小テストの実施は難しいと思います」
 物理を担当している佐々木俊哉先生は、今年から2年生のあるクラスを対象に、試験的に65分という時間枠を活用して毎時間「3分実験」を導入している。新しい単元に入るときに、問題提起となる実験を行い、その結果について生徒たちに考察させるのだ。前半の30分は実験と考察に使い、後半を講義に充てている。体験と考察に裏打ちされた知識を身に付けさせることをねらいとしたものだ。
 「実験と考察に多くの時間を割いている分、取り組む演習問題の数は減ってしまいます。にもかかわらず定期テストの成績を見ても『3分実験』を実施しているクラスの生徒の演習問題を解く力は、演習問題に多く触れていた過年度生と変わらず身に付いていました。今のところ効果ありと判断しています」
 物理は丸暗記ではなく、定理や公式の仕組みから理解できないと、ある段階で成績が頭打ちになる科目だ。実験を通して考察力を身に付けている生徒たちは、受験期に演習問題中心の学習を始めたときに大きく学力が伸びることが期待できる。
ところで、
65分授業を導入している学校によく寄せられる疑問は「本当に生徒たちを65分間も授業に集中させることができるのか」ということだ。
 「確かに集中力が続かず、学習態度も受け身の生徒が見られるようにはなりましたが、本校では自分で考えることのできる”大人の生徒“が今でも比較的多いように感じます。私の授業では、私の説明に対して生徒が疑問点を質問し、それに答えているうちに、授業が予想外に深まっていくことがよくあります。これは65分だからできることで、50分授業だと教師の一方的な教え込みで終わってしまう場合もありますよね。”大人の生徒“にとっては、65分授業の方が充実感があるようです」(後藤先生)
 自主性・自学力を持っている生徒に対しては、むしろ65分授業の方が適しているというのだ。同校は岐阜県内でも有数の進学校として知られており、生徒の学習意欲はおしなべて高い。ただし同校は、生徒に元々備わっている能力に頼るのではなく、自主性・自学力をさらに伸ばしていく指導も重視している。つまり、65分授業によって授業内容を充実させ、さらに65分授業を成り立たせる上で前提となる自主性・自学力も養成しているわけだ。
 例えば昨年からスタートした2、3年生対象の「特別講座」もその一つ。講座が開かれるのは隔週月曜日の放課後1時間で、科目は5科目。部活動や生徒会活動を大切にしている同校ではあるが、「この時間だけは部活よりも講座の方を優先させる取り決めになっている」(後藤先生)という。講座としては「名大レベル英語」「難関大数学」などがあり、難関大を志望している生徒が対象。講座を受講するか否かは生徒の自主性に任せている。
 「内容は、模試や難関大クラスの過去問に取り組ませるなど、演習が中心となっています。高い目標を持っている生徒同士が机を並べて勉強することで、お互いに刺激にもなります。また『学校はきちんと指導してくれている』という信頼感を得ておけば、受験直前期の国公立大個別入試対策指導の時などに、生徒がついてきてくれます」(後藤先生)
 
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