ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
低学年次の情報ギャップとその対処法
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保護者の意見(2)
 部活に次いで意見が目立ったのが、三者面談に関するものであった。少なくともこのケースでは、次の二つの問題が指摘できる。
 一つ目の問題は、三者面談の意義付けが、学校側からきちんと説明されていない点である。前号で考察した通り、三者面談を有効に活用するためには、保護者に対する事前の課題設定が欠かせないが、これに失敗している例が少なくない。1年生6月の面談であれば、まず「子どもの興味・適性を把握する」といった課題が明確にされなければならなかったはずだ。幸い、意識の高いこの保護者の場合は、その課題をクリアしていたが、意識がそれほど高くない保護者の場合、「本人のことは本人でないと分からない」といった答え方をされてしまうこともあり得る。
 ちなみに、この保護者の子どもが通う学校が何もしていなかったわけでは決してない。追加ヒアリングを行ったところ、事前にPTA通信を使った情報提供自体はあったという。むしろ問題は、それが「通知」で終わってしまい、親子が面談に向けて話し合う上で役立たなかったことだろう。プリントを配りっ放しにするのではなく、具体的にどうしてほしいというメッセージを伝える努力をすべきであったかも知れない。
 二つ目の問題は、三者面談の位置付けが曖昧だったために、保護者が進路決定を焦り始めている点である。周知のように、1、2年次で生徒に描かせたいのは、将来像の大まかな方向性であり、それを具体的な志望校にまで落とし込むのは3年次になってからでも遅くはない。3年間の指導ストーリーが保護者に伝わっていないために、このような焦りが生じてしまったのだろう。保護者向けの進路シラバスを作成するなどして、保護者が時期に応じた自らの課題を認識できるようにする工夫が必要である。
保護者の意見(3)
 夏休み前後から本格的な進路学習がスタートする学校は多い。その意味で、三者面談を通じて、保護者にも進路学習に向けた意識付けを行っておくことは極めて重要である。
 だが、漠然と「進路の話」と言っても意味するところは多様である。この例のように、その意味を測りかねる保護者がいても不思議ではない。
 進路学習について保護者に伝える際、教師が注意しなくてはならないのは、「学校の進路学習」と「家庭の進路学習」に求められる役割の差を踏まえて情報発信を行うことだ。すなわち、「自分探し→興味・適性の発見→文理分け→志望校決定」という具体的な作業はあくまでも学校ベースで、進路を考える上での、基礎的なものの見方や考え方は家庭ベースで育てる、という役割分担を明確にする必要があるのだ。この点が曖昧になってしまうと、保護者の方が、学力面だけを見て志望校を決めてしまったり、偏った情報によって、生徒の進路を歪めたものにしてしまう可能性も否定できない。
 保護者に対する具体的な発信としては、「同じニュースを見て、互いの見解を話し合ってみる」「ボランティアや地域の行事に参加させ、社会体験を積ませる」「一緒にオープンキャンパスに行ってみる」といったものが考えられる。また、保護者の職業について話す際にも、その職業のやりがいや、なぜその職業に就いたのか、といったレベルで話し合ってもらうのがよいだろう。
 
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