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低学年次の情報ギャップとその対処法
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保護者の意見(4)
 成績と進路のミスマッチに対する不安もかなり広範に見られた。文理選択を目前に控えた時期だけに、保護者が不安に思うのももっともであろう。特に三者面談では、生徒の成績データがある程度まとまって示されるので、生徒の学力に対する不安が、否が応にも高まってしまいがちだ。
 こうした場合に最も危険なのが、この時点での成績や科目の得意・不得意だけで文理選択を行ってしまうことだ。もちろん、最終的に受験校を決定する際にはこれらの要素を考慮しなければならないが、1年の時点ではあくまでも「なりたい自分像」を基に進路を考えるべきである。もし、保護者に進路決定を焦るような素振りが見られたならば、学力面に対するフォローは、学校がしっかりと責任を持つことを伝えると共に、学校として、1年次をどのような時期として捉えているのかを改めて説明する必要があるだろう。
 なお、このようなケースでは、子どもの学力に不安を感じても、子どもが不安を感じるような言葉を決して掛けないよう伝えたい。特に「大丈夫?」という言葉は掛けてしまいがちなので注意が必要である。むしろここで必要なのは、「大丈夫だから!」という励ましの言葉だ。常に励まし役に徹するよう伝えたい。
保護者の意見(5)
 地域との結び付きが強い中学校段階では、保護者と学校が接触する機会は比較的多い。しかし、生徒の通学範囲が広く、また、時間的に余裕の少ない高校が頻繁に保護者会などを開くのは難しく、保護者の声を直接聞く機会が限定されてしまうのはある程度やむを得ない面がある。
 だが、機会が少ない状態に無反省でいてよいわけはない。そこで、是非とも各校で見直しておきたいのがPTA通信など、保護者向けに、学校が発行する各種情報媒体の在り方だ。
 先にも触れたように、多くの学校がPTA通信を発行しつつも、その内容がうまく保護者に伝わっているかと言えば必ずしもそうとは言えない。また、どちらかというと、学校の発信をただ伝えているだけで、保護者から寄せられた声がどのように校内で生かされたのか、あるいは改善に役立ったのかという検証機能は希薄である。このような「フィードバック」の機能を充実させることで、保護者に対する説明責任を果たしていく必要があるだろう。実際、本誌02年10月号の「指導変革の軌跡」で取り上げた富山中部高校などでは、PTA通信の内容の見直しが、学校運営に対する保護者の協力を引き出す上で、大きな役割を果たしている。保護者と学校が双方向的な関係を構築できるような見直しが求められている。


保護者の目線に立った情報提供が求められる
 以上、多くの学校で課題になると思われる、代表的な保護者の意見について取り上げてみた。なお、ここに挙げた考察はあくまでも一例であり、各校の実情に応じた柔軟な対応を模索してほしい。ただし、どの学校でも共通に留意しておきたいのは、教師が「当たり前」と思っていることが、保護者にとっては必ずしも「当たり前ではない」ということである。「発信したはずの情報が伝わっていない」「情報の意図が誤認されている」といった問題の多くは、この点を見落としていることに起因する。逆に、この点さえしっかり見直すことができれば、既存の情報発信の体制を大きく変えることなく、問題を緩和することができるはずだ。
 教師の視点、保護者の視点双方に対する配慮を持てるかどうかが、学校の情報発信全体に問われていると言えよう。
資料
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