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ベネッセ教育総研顧問 |
深町芳弘
Fukamachi Yoshihiro
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元墨田区立両国中学校校長
元墨田区立中学校校長会会長
元練馬区中学校教育研究会数学部長
元特別区指導室長会幹事長 |
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~総論~ |
「個に応じた指導」が浸透する中学校 |
「個に応じた指導」は、小・中学校、高校の各教育課程共通のキーワードである(図1)。 |
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特に、小・中学校では、高校に先立ち2002年度より新教育課程が導入され、習熟度別学習や「総合的な学習の時間」の定着、選択教科の拡大など、高校以上に「個に応じた指導」の色合いが鮮明になっている。教師が一方的に知識を与えるのではなく、児童・生徒が興味を持ったもの、必要だと思ったものを自ら選んで学ぶことが、学習意欲を高めると共に学習効果の向上も促す。ひいては意欲的に自分の道を切り開く「生きる力」を身に付けさせることにつながる。これが「個に応じた指導」の目指すものである。そのため、教師は一人ひとりの違いを見極め、それぞれの児童・生徒に応じたアドバイスや、学習を助けるための働き掛けをすることが求められている。 |
「生徒が選ぶ」が基本 教師は学習を手助けする存在へ |
例えば、中学校の習熟度別学習では、診断テストの結果などを参考にしながら、学力に応じたクラスや教材を生徒自身に選ばせることが多い。教師は客観的に生徒の理解度を見て、「もう少し基本をしっかりやった方がいい」とか「発展的な問題に取り組んでみては」などのアドバイスはするが、最終的には生徒の自主性・主体性を尊重する。
「総合学習」のテーマ設定についても同様だ。「国際理解」「環境」など大きなテーマは学年全体で設定し、個別のテーマを生徒に決めさせる。もちろん、ただ単に生徒に決めさせるのではなく、教師は生徒がテーマを決めやすいように誘導していく。例えば「環境」と聞いて思い浮かぶ言葉を生徒に挙げさせ、出てきたキーワードを整理し、個々のテーマを考えさせるのである。
「個に応じた指導」の浸透により、効率性を求める一斉授業は影を潜めつつある。学習の主役はあくまで生徒自身。教師は大勢の生徒を前に授業を行う存在から、生徒の個性を見極め、多様な学習にかかわる存在へと変わりつつあるのだ。 |
少人数指導のための加配で行政も「個に応じた指導」を支援 |
教師の指導方法が「個に応じた」ものに変化していく中、指導形態や指導時間など教育環境も大きく変わろうとしている。「指導形態」の工夫としては、チーム・ティーチングの拡充や少人数指導などがある。行政側も、02年4月から定員数を超えて従来のチーム・ティーチングに加え、少人数指導のための教師を加配するなど、教師の創意・工夫が可能になるよう側面支援している。
また、重点教科の授業時間数の増加、朝学習や土曜日補習の充実など「指導時間」を工夫する例も見られる。1コマ50分の授業を25分ずつに分け、前半と後半で異なる教科の授業を行うなど、大胆な授業時間の弾力化を進める学校もある。
さらに、評価に関しても「個に応じた指導」の視点は欠かせない。評価は生徒の学ぶ意欲につながるものであることが望ましい。つまり、生徒が自分の学習に対する理解度を把握し、それを次の学習に生かすことが求められるのだ。
そのための手法が、個々の生徒の目標に対する到達度で評価する目標準拠評価(絶対評価)だ。評価は「観点別評価」(図2)によって行われ「表現」「理解」など4観点(国語のみ5観点)について、それぞれA~Cで評価する。 |
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単にテストの成績だけで評価するのではなく、「関心」「意欲」「態度」など授業中の生活態度の観察も必要で、きめ細かな「個に応じた」評価が求められるのである。 |
自治体ごとに特色ある学校づくり |
現在、学校教育について都道府県、市区町村に権限を委譲しようという流れがあり、自治体ごとに「特色ある学校づくり」を目指した動きが活発になりつつある。全国共通の画一的な教育を行うのではなく、地域の特性に合わせた教育を自治体単位で考案していこうというのである。例えば東京都でも、教員免許を持ちながら教職に就いていない人材を学校に配置したり、大学生をボランティアとして採用したり、教師の補助や放課後の指導に当たらせるなどの動きが広がりつつある。
「個に応じた指導」をベースにしながらも、地域あるいは中学校によって取り組み内容は様々だ。高校側も、これまで以上に地域の中学校の取り組みを注視していく必要があるだろう。 |
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