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生徒の主体性を育む教育の在り方を模索
今回の高校生フォーラムにおける、もう一つの収穫は、行政や学校の変化に期待を寄せるだけでなく、高校生が主体的に「学び」に向かうことの大切さを表明したことだったと言える。
「生徒自身の変革」を模索した高校のうち、最も印象的なプレゼンテーションを展開したのが、開催校の倉吉東高校「教えも腹八分~蝕まれるジリツ~」である。生徒が主体的に学ぶ意欲を喚起するための方策を示した同校の提言に、多くの観衆が惜しみない拍手を送った。
提言の出発点になったのは、日本の高校生の学習意欲の低下だ。客観的な統計資料を基に諸外国と比較しながら考えた結果、教師が一から十まで生徒に教え込む「教えすぎの教育」に原因を見いだしたのである。
同校が「意欲」に着目したのは「授業中に発言をしない」「先生の説明を聞いているだけ」「テスト対策は範囲内を暗記するだけ」といった身近な学習状況に対して、日頃から問題意識を持っていたからだ。そこで、普段自分たちが受けている知識伝達型の一斉授業に対して一石を投じたのである。
そこで同校が提示したキーワードが「ジリツ」だ。「ジリツ」とは、周囲に頼らないで生きていくという意味の「自立」であり、自分の行動に責任を持つという意味での「自律」でもある。そして「人々が『ジリツ』し、よりよい社会を築き上げていくこと」が教育の目的であるとした。
同校の提言は「教師体験プラン」と「研究活動プラン」の二つ。
前者は、生徒に授業を行わせる取り組みで、主に3年生が1、2年生に対して授業計画から実際の指導までを行うもの。後者は、グループ活動を発展させた取り組みで、自らテーマ設定を行い世界規模の発表会「
考校生
オリンピック」に向けて研究を深めるものだ。両者とも学びを深め、発表・説明能力を高めることを目的とする。こうすることで、知識を増やすよりも大切な「考え方・学び方」を身に付け、高校生を「ジリツ」へと導くというのである。
「生徒よ、すべてを教わるな! 自ら学べ!」のフレーズに端的に表されていた通り、同校の提言は、教育を自分たちのものとして捉えており、そこに「学び」に対する主体性の芽生えが感じられた。
倉吉東高校のプレゼンテーション。安養高校と同様、すべて英語による発表を行い、会場を沸かせた。
教育のあるべき姿は国や文化の違いを越える
最後に、国の違い、文化の違いの別なく、高校生の教育に対する思いが、普遍的なものであることを感じさせてくれた韓国・安養高校のプレゼンテーションをご紹介しよう。
情報化の進展著しい現代社会において、すべての情報を頭に叩き込むことは不可能である。したがって、これからの教育は知識を詰め込むためのknow-whatではなく、生徒にやり方を教えるknow-how、情報検索能力であるknow-where、情報を持っている人を見つけるknow-whoの各技能を発展させる必要がある。つまり、教育とは単に学力を伸ばすことだけではなく「自ら学ぶ力」を伸ばすことにあるというのが、同校の主張である。
そして、それを実現するための方法として「自由な討論」「自発的な学び」「個に応じた学び」の必要性を強調した。韓国の教育事情をベースとした提言であったにもかかわらず、求める教育は日本の高校生が考えるものと大きな違いがないことが印象的だった。
高校生は「主体的」に学びたがっている。学校、そして教師はその背中を押してくれる存在であってほしい。今回の高校生フォーラムにおける各校の主張には、そうした高校生の思いが込められていたのではないだろうか。
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