社会情勢の変化を受けた新たな確認ポイント |
以上のような一般的な事項に加え、三者面談では近年の社会情勢を踏まえたポイントについてもきちんと押さえるようにしたい。先のアンケートによると、特に以下の2点に対する配慮が必要になると思われる。 |
(1)資格取得志向の高まり
近年の経済情勢を反映して、何らかの資格が取得できる進学先を選ばせたいと考える保護者は多い(図2)。 |
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成績・偏差値といった近視眼的な視点ではなく、大学卒業後まで見通した上で進路選択を支援しようとする保護者が増えること自体は、教師にとっても喜ばしい傾向と言える。
しかし、この傾向を素直には喜べないことも確かである。なぜなら、このデータでも示されているように、本来、学部・学科選択で最も重視すべき「学問内容」よりも、資格取得を重視する保護者が多いからである。データには表れていないが、この傾向は特に就職難が伝えられる女子生徒の保護者において顕著なようだ。
学部・学科選択に際して何を重視するかはもちろん個人の自由であるが、あくまでもその選択権を持つのは生徒自身である。もし、保護者の一方的な意見の押し付けが見られた場合は、早期に是正するようにしたい。 |
(2)地元志向の高まり
一方、近年の顕著な傾向としてもう一つ指摘できるのが、保護者の地元志向の高まりである。ここで問題となるのは、全国区の大学を受験する学力があるにもかかわらず、保護者の希望に従って地元大への進学を希望してしまう生徒である。実際、図2では「自宅からの近さ」と同様に「学費の安さ」の項目でも高い数値が出ており、経済的負担に苦慮する保護者の様子がうかがえる。 |
ここで重要なのは、生徒の可能性を広げるような選択をサポートすることだ。「本当にその大学で学びたい」という生徒の意志が強ければ、奨学金制度の情報を提示するなど、生徒と保護者の判断材料をできるだけ増やしていくような対応が不可欠だろう。また、一人暮らしをするという経験自体が、生徒の人間的成長に大きな効果をもたらすことも期待できる。あくまでも生徒に本当にふさわしい進学先がどこなのかを見極めさせるよう促したい。地元志向の高まりの背景には、「就職も地元で」という意識もあるようだが、近年では地方企業といえども、地元採用枠を次々と撤廃する方向に動いている。場合によってはそうした厳しい現状も伝え、できるだけ生徒の将来を狭めない選択をするよう働き掛けねばなるまい。 |