ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
指導力向上を図る研修・育成の在り方を探る
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不易と流行を見据えた指導目標・実践が重要
――それでは管理職というお立場から組織運営をする上で、大切にしていることは何でしょうか。
飯尾 校内が「平等主義」になりすぎてはいけません。ある程度の「縦社会」や「リーダーマネジメント」が必要です。そして、リーダーは常に新しい施策を新しい視点で積み上げていくことが求められます。学校の個別の施策は5年が限界でしょう。5年以上の施策は何もしなければ形骸化してしまいます。教育は逡巡する場ではありません。立ち止まらず新たな挑戦をし続けなければなりません。写真
中条 私は生徒の立場に立って、今何が大事なのか、自分の教育信念や方針を「言い続ける」ことを大切にしています。生徒も先生もなかなか急には変われません。管理職として、何事も一過性のものに終わらせないように心掛けています。また、不易と流行を考えた時、流行も大切なのですが、教育の不易の部分も守り続けること、それが学校の伝統となり、組織力、指導力となって継続されていくものだと思っています。
平野 私も原点に立ち返って教育を考え直すことが、教育改革の基本だと思います。そこから今の教育に何が必要で、何が必要でないかが明らかになるでしょう。先生方がお互いの指導を認め合いながら協力する体制をつくる。そうすれば、学校の特色を生かした指導ができるのではないでしょうか。


主任クラスのリーダーシップが鍵
――ご紹介いただいたような取り組みを、継続・定着させていくにはどうすればよいでしょうか。
飯尾 校内体制を考えれば、やはりビジョンを具体的な施策に落とす進路主任や教務主任、学年主任など校内の各リーダーが育つこと、そしてそれぞれが多くのノウハウを身に付け、それを継承していくことが大切だと考えます。
平野 私も、主任クラスの先生を軸として、校内のコンセンサスをつくることが大切だと思います。来年度、是非本校で実施したいと考えているのが、主任の先生を中心に少人数で、定期的にテーマを決めずに、いろいろなレベルで話し合う場を設けることです。大上段に構えた会議になると、建て前論ばかりになりがちですから、ざっくばらんに語り合える場をつくりたいのです。
 つまり、校内に対しても「開かれた学校」であるということですね。教師の夢や願いを出し合い、ぶつけ合う議論が保証されている学校づくりが求められているのではないでしょうか。
飯尾 私が以前教頭として勤務していたある高校は、学年や分掌の指導方針が一致せず、学校全体がばらばらの状態でした。そこであるとき学年主任や進路主任など主任クラスの先生を連れ出して料理屋に行きました(笑)。そしてそれぞれの分掌や学年が抱えている課題を提示し、「次回も同じような会合を開くから、それまでに課題解決に向けてどのように取り組むか、レポートを書いてくるように」と指示しました。その後、会合を続けるうちに、日常的に先生同士で本音の議論が交わされるようになり、学校の指導体制としての一つの形ができ上がっていったのです。
 一例ですが、こうしたことの積み重ねが学校独自の文化をつくります。教師集団というのは、よく言えばお互いを尊重、悪く言うと同僚のやっていることに批判をしない、ぬるま湯集団になりがちです。だから、コミュニケーションの場を意図的に設定する中で、特に学校運営の核となる主任クラスがリーダーシップを発揮し、校内の指導の「意味付け」をしっかり行うことが重要になります。組織の一枚岩は「つくる」ものではなく「できる」ものなのです。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
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 座談会の中で述べられていたように、近年、生徒気質や進学環境が変化する中、進学実績という指導目標だけでは、組織が一つにまとまり辛く、実効性のある動きが取りにくくなる傾向がある。組織力を発揮するためには、「前年踏襲主義」ではなく、その時々の正しい課題認識と指導方針による意思統一がなされた実践が重要になる。
 座談会では、主任クラスの教師を軸に、指導体制を一体化していくことの重要性が話し合われた。いかに主任クラスの教師が自分の言葉で指導理念を持つか、また、進路指導、教科指導における具体的なノウハウを継承していくための仕組みを持つかが問われてくる。特に、教師の異動サイクルが短期化する中、研修方法や育成機能の工夫は重要だと言えるだろう。
 座談会では大局的な視点から組織力・指導力強化の必要性を検証したが、次ページ以降では、進路指導や教科指導などの具体的な場面で、組織力強化と指導力向上を試みている事例を紹介する。
 
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