ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
指導力向上を図る研修・育成の在り方を探る
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若手とベテランを組み合わせることで指導力の向上を目指す
 同校では、担任と副担任との組み合わせについても工夫を凝らしている。同校での勤務経験の浅い教師が担任になる場合には、副担任にはベテランが付く。そして担任の業務遂行に対して副担任が助言を与え、担任を育てるという体制が採られている。逆に、ある程度の経験を有する教師が担任をする場合は、副担任には同校での経験の浅い教師を充てる。担任の業務を副担任が補佐することで、副担任は担任業務の在り方を学ぶことになる。こうして若手の教師や同校での経験の浅い教師が、実践の中でベテランに教わりながら、指導ノウハウを身に付けていくというわけだ。
 「私は副担任として、若い担任の先生をサポートする立場になることが多いのですが、若い先生はしばしば生徒の心理の内側に気が付かないことがあるんですね。例えば、ある生徒が推薦入試の推薦書が欲しくて、担任を訪ねたとします。その生徒は、確かな志望動機があってその大学・学部の推薦入試を受けたいのか、それとも一般入試に不安を感じて推薦入試に逃げようとしているのか、担任は生徒の生活態度や学習態度などを見ながら判断することが求められます。ところが若い先生は、そこまで生徒の心理を読めなかったりするんです。そんなときは副担任として横で見ながら、さりげなく助言しています」
 このように若手とベテランをペアで組み合わせる体制は、言語化できる情報やノウハウばかりでなく、勘やコツなどの言語化しにくい暗黙知を若手に継承していくという機能も果たしていると言えるだろう。
 さて、組織力による指導で学校全体の指導レベルを高め、同時に個々の教師の資質向上も実現した同校だが、一方で南先生は、組織が確立したことによるマイナス面も指摘する。
 「組織が強固になればなるほど、組織の中でやるべきことがルーチン化され、教師が自分で考え工夫する機会が失われるという弊害があります。教師の自己成長力が損なわれるわけですね。事実、最近何かにつけてマニュアルを求める教師が増えているように感じます」
 では、組織の硬直化を防ぐ手立てはあるのだろうか。
 「長崎県では今年度より総合選抜制度が廃止され、本校にも従来とは違う気質の生徒が入ってきました。一言で言うと、素直で前向きだが学力は決して高くない生徒が多いんです。彼らの学びへのモチベーションを3年間どう維持させるか。これまで我々は学力分析と学力向上の方策に比重を置いてきましたが、今後は今時の生徒の気質や価値観を分析し対応することが大きなテーマとなります。こうした新しい課題を組織の中に取り込み解決していくことが、組織の活性化につながると考えています」
 
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