ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
指導力向上を図る研修・育成の在り方を探る
沼尻良一
栃木県立宇都宮高校教諭
沼尻良一
Numajiri Ryoichi
教職歴30年目。同校に赴任して8年目。SSH研究主任。「常に学ぶ気持ちを忘れないようにしたいですね」

高野正明
栃木県立宇都宮高校教諭
高野正明
Takano Masaaki
教職歴27年目。同校に赴任して4年目。進路部。「生徒が悔いを残さないよう進路選択をバックアップしたい」

藤田泰
栃木県立宇都宮高校教諭
藤田泰
Fuajita Yasushi
教職歴21年目。同校に赴任して12年目。進路指導主事。「生徒の立場に立って、希望進路をかなえてあげたい」

横尾浩一
栃木県立宇都宮高校教諭
横尾浩一
Yokoo Koichi
教職歴17年目。同校に赴任して10年目。進路部。「生徒が全力で高校生活を送れるよう支援したいですね」
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学校現場の事例(2) 栃木県立宇都宮高校
校内模試の作問を通して
新任教師の教科指導力向上を図る
基準点を指標とした校内模試の作問が指導力向上につながる
 組織的な指導体制の中で新任教師の指導力向上を図る長崎北高校とは対照的に、個々の教師の教科指導力向上を通して、学校全体の指導力の底上げを図っているのが宇都宮高校だ。県内屈指の進学校として知られる同校では、独自に作成・実施する校内模試を新任教師の指導力向上の研修として活用している。
 同校では長年、校内模試の成績を生徒の大学選択の基準としている。どの大学が合格ラインになるのかを、校内模試の「素点」で判断できるようにしているのである。校内模試は国数英理社の5教科で行い、総得点は文系・理系とも900点満点。5教科の平均点を基準点と照らし合わせることで合否の可能性を判断する。同校では受験者数の最も多い東北大を一つの指標としており、特に同大法学部の基準点を50点として設定している。つまり、校内模試で50点以上取ることができれば、東北大法学部の合格ラインに達していることになるのである。ちなみに60点以上が東京大の合格ラインである。実施回数は計5回。2年次の1月に実施する「第0回模試」を皮切りに、3年次の4、6、9、11月にそれぞれ第1~4回までの模試を実施する(図3)。
図3
 素点による指導を行うため、東北大法学部のレベルを50点になるように作問を行うには、高度な作問テクニックが必要とされる。当然、高い教科指導力が必要になるわけだが、実はここに、転任者の指導力を向上させる仕掛けがある。進路指導主事の藤田泰先生は次のように述べる。
 「校内模試の成績を大学選択の基準とする上で、何よりも重要になるのは、校内模試の内容が各大学の合格基準に照らして妥当かどうかという点です。つまり、生徒の真の実力を判定するに足る、質の高い問題の作成が必須になるわけです。そのためには高い教科指導力が要求されます。しかしこのことは、裏を返すと、作問を通して教科指導力を養うこともできるということです。特に、新たに転任してきた教師のほとんどが、このような作問は未経験のため、転任後1、2年の間に行う校内模試の作問が、実質的に教科指導力向上のための研修の役割を果たしていると言えます」
 図4は、過去10年の校内模試平均点の推移を示したものであるが、10年以上に渡って34~38点の範囲で推移していることが分かる。
図4
同校の教師がいかに安定した作問を続けているかということを端的に表していると言えよう。それでは、同校ではどのように校内模試を活用し、教師の指導力向上に役立てているのか。作問→分析→面談の流れに沿って見てみたい。
 
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