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10年後を見据えたキャリアプランを描かせる
高田
生徒に自分自身の将来について思い描かせるのがキャリア教育のポイントの一つになるんでしょうね。
吉本
キャリア教育の指導にはいろんなスタンスがありますが、私の場合は、生涯に渡るすべてを考えさせるのではなく、20代後半から30代前半に焦点を絞って、そこでどんな生き方をしているのか、またそこに至るまでにどんなプロセスを歩んでいくのかを考えるというものです。目先の進学や就職を前提にして進路指導をしていると、答えが目の前にあるので、子どもたちは「さらにその先は」という風には考えなくなります。大学が最終ゴールのようになってしまいかねません。
高田
大学は「通過点」というくらいに考えてキャリアプランを設計する方がいいということですね。
高松
本県では、10年ほど前から進学を中心とする学校においても、職場見学や職場研修等の取り組みを推進するところが出てきました。その取り組みの中で、生徒たちは自分が将来目指す職業に就くために、今何をしなくてはならないのかというビジョンを持って行動する傾向が強まったことは、教育がいかにモチベーションにかかわる活動であるかを証明していると思います。
宮原
本校でも生徒の進路を考えるときは、まず「何がしたいか」という所からスタートします。それが本当にその生徒に向いているかどうかは生徒との話し合いの中で決めていくのです。ただ、今の生徒の一番の問題は、
図1
で言うところの「情報活用能力」にあると思います。教師が進路指導をする際、情報を探しなさいということをよく生徒に言いますよね。いわゆる調べ学習ですが、今の生徒は調べることそのものよりも、調べるきっかけをつかむことに苦悩しているんです。自分が何に向いているか分からないため、調べるきっかけがつかめない、どこから調べていいのか分からない。そのきっかけを学校側が指導できれば、生徒の適正な進路選択につながります。
本校では大学や専門学校での学習を卒業単位に認める「高大等連携事業」を行っていますが、生徒の希望と適性を見極めるのに効果を上げていると思います。1年生のとき、ある学部の授業を受けて「自分のイメージとは違う」と、進学先を変えた生徒もいました。
高田
将来のビジョンを持たせようとするとき、生徒に対して、どのようなアドバイスをされるのですか。
宮原
「ともかく今は勉強したい」という生徒に、無理矢理、職業観を与えようとすると、その生徒はかえってだめになってしまいます。生徒それぞれの個性を伸ばすことが大事で、勉強したいという生徒に対しては、学びを目的とした大学選択であっても構わないと思います。そもそも職業観を育むにしても、「目的が変化することは構わない」と生徒には言っています。一度、目的意識を持てた生徒は、大学で目的が変わったとしても学び続けますからね。
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