ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
キャリア教育の視点と方法を探る
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キャリア教育において教師はコーディネーター
高田 最後に、子どもに何を重視して職業や仕事を選択してほしいかという問い掛けを小学生の保護者に行ったデータ(図4)を見ていただきたいのですが、ポジティブな質問に対する肯定率は軒並み高く、「子どもの個性を生かす職業・仕事に就いてほしい」は98.1%、「社会のために役立つ」は85.2%。これに対して「高い収入」や「苦労してでも昇進・報酬」などは65%くらい。「自由な時間を得る」に至っては5割を切っています。このデータを見る限り、保護者の意識は非常に健全ですよね。
図4
吉本 保護者の方々は、社会で一定の経験を積んできていて、それが社会のあるべき方向性を示しているのでしょうね。ただそれを、どうして親が子に伝えられないのかというところに問題があるのだと思います。先程の図3を見ると「大学生の悩みの相談相手」の一番は「友人」です。
図3
現実の社会を知らない友人と相談して、お互い悩んでいるわけです。保護者から子どもに伝わらない以上、外部の人材に力を借りることが重要になります。今後、キャリア教育を進めていく上で、学校の先生に求められるのは、いかに外部人材を有効活用できるかという「コーディネーター」としての力なのだと思います。
高田 実際、宮原先生の学校では、企業人や学校外の人材をうまく活用して効果を上げています。教師がコーディネーターとして活躍するとき、キャリア教育はうまく機能するということですね。本日はどうもありがとうございました。
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 生徒に将来のキャリアプランを描かせることは、主体的な学びを促す上で欠かせない要素の一つである。産業界をはじめ、キャリア教育の必要性が叫ばれる背景には、「学びの復権」に対する社会の期待が込められていると言えよう。「総合学習」に対する手詰まり感を多くの学校が感じている現在、「キャリア教育」の視点に立って、取り組み内容を再考すべき時が来ているのかも知れない。
 座談会でも指摘されていた通り、今後は教師としての(1)生徒とのコミュニケーション能力、(2)コーディネートする能力などが求められる。いかに学校内外との連携を保ち、一人ひとりの教師が生徒のコーディネーターとして活躍できるかが、キャリア教育を成功させる鍵になるのではなかろうか。
 次ページ以降では、近年、大学でも問題となっている学生の意欲低下に対処すべく、積極的にキャリア教育を推進し、日々の講義の中に組み込んでいる広島大と、大学全体で組織的にキャリア教育を推進している武蔵野大の事例を紹介していきたい。
 
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