ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
リスニングテスト導入の意図を読み解く
松川誠司
文部科学省高等教育局
学生課大学入試室長
松川誠司
Matsukawa Seiji
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●課題検証
2 リスニングテスト導入に向けた課題と検討状況
センター試験へのリスニングテストの導入は発表されたものの、今後の試行テストに向けたスケジュールや、実際の作問状況については必ずしも十分な報道がなされていない。大学入試センターとの調整に当たっている文部科学省高等教育局学生課大学入試室の松川誠司室長に状況をうかがった。
検証1
リスニングテストの導入は、直接的には00年11月の大学審議会の答申を受けたものだとされていますが、他の教育施策との関連などはどうなのでしょうか。
A 今回のリスニングテストの導入に際しては、大学審議会の答申の影響が大きかったと言えるのですが、文部科学省内では、以前から英語教育全般とのかかわりからセンター試験へのリスニングテストの導入を議論してきました。
 中でも政策的な関連性が最も高いのは03年3月に策定された「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」です。同計画では、学校教育における英語教育の目標を「実践的な英語コミュニケーション能力の育成」としていますが、日本では「入試が変わらない限り教育は変わらない」という傾向があります。文部科学省としては、センター試験へのリスニングテスト導入を機に、高校側でも本格的な指導改善を考えてほしいという思いがありました。そのためには、大学入試で英語のコミュニケーション能力が評価されるようにする必要があると考えたのです。
 ですから、センター試験へのリスニングテスト導入については、「単に大学入試が変わった」という受け止め方ではなく、高校現場における英語の指導改善へのメッセージとして受け止めていただきたいと思います。文部科学省では「リスニングテスト導入と英語教育の改革は軌を一にするもの」というスタンスで、今回のリスニングテスト導入を捉えています。


検証2
リスニングテストの導入に向けては様々な意見があったと思います。議論の過程で、高校現場や有識者の意見などはどのように集約されたのでしょうか。
A 00年11月の大学審議会の答申を受け、01年に入試改善に関する協議の場として、有識者、大学人、PTA、高校の校長などをメンバーとする審議組織を省内に設けました。メンバーは11名。以来、2~3か月ごとに集まり、継続的に審議を行ってきました。中でも大きな検討課題となったのが、試験会場を高校と大学のどちらにするのかということでした。
 03年の6月頃に、「高校を会場として実施する」という報道が流れたことがありましたが、その背景には受験環境の公平性をいかに確保するのかという問題がありました。と言うのも、大学の教室は規模や放送設備にかなりのばらつきがあるため、音響環境が必ずしも均質ではないのです。一方、高校実施であれば、比較的平等な教室規模・放送設備が確保できます。
 しかし、センター試験はあくまでも大学入試の一環として行われるものですから、大学関係者の間にはこれまで通り大学で実施したいという意見がありました。そこで、その後の議論で出てきたのが、個別音源方式というアイディアだったのです。
 この間、文部科学省内の審議組織のみならず、高校長会や国立大学協会などにも随時説明し、意見を聴きましたが、情報提供が必ずしも十分でなく、現場で混乱を招いた点については今後改善したいと思います。
 
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