ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
リスニングテスト導入の意図を読み解く
鈴木敏明
東北大アドミッションセンター教授
鈴木敏明
Suzuki Toshiaki

夏目達也
東北大アドミッションセンター教授
夏目達也
Natsume Tatsuya
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●大学の動き
3 入学者選抜の在り方をどのように見直すのか
センター試験へのリスニングテスト導入を、大学はどのように受け止めているのだろうか。東北大、筑波大へのインタビューから、今後の動向を探る。
case1 東北大
学部により「コミュニケーション力」の捉え方に差がある
 東北大では現在、学内に設けられた「アドミッションセンター」を含めた「研究委員会(全学的な入試委員会の下部組織)」を中心に、06年度入試に向けた対応が議論されている。同大ではこれまで、個別試験ではリスニングテストを実施してこなかったが、アドミッションセンターの夏目達也教授によれば学内では「総論賛成」が得られた状態だと言う。
 「リスニングテストの必要性そのものについては、社会情勢などから時代の必然という見方が大勢を占めています。入試については、本学の社会的立場なども考え、06年度からの扱いを各学部で慎重に検討しているところです」(夏目教授)
 ただし、研究重視型の大学を目指している同大においては、英語によるコミュニケーション能力に対する各学部の評価は様々であるという。そのため、06年度から一気に英語の入試の在り方が変わるかと言えば、必ずしもそうではないようだ。
 「英語によるコミュニケーション能力が、社会で生きていくために必要だという点においては、ほとんどの教員が認めています。しかし、入試の中でそれをどう位置付けるのかについては、研究領域や学部によって様々な見解があるのが現状です。『リスニングテストを拙速に導入しても、肝心の英文読解力や文法力の不足した生徒が入ってきてしまうのではないか』と危惧する声がある一方、『入試に課すとして、実際にどれだけの配点を与えるべきなのか』といった観点で議論している学部もあります。学生の募集はあくまでも学部単位なので、リスニングテストをどう位置付けるかについては各学部の判断に委ねていますが、今年度中にはすべての学部で議論をまとめ、公表する方針です」(夏目教授)


高校現場の状況を見て最終判断を下す
 一方、同じくアドミッションセンターに籍を置く鈴木敏明教授は「リスニングテストに関しては、高校現場の英語の指導状況を踏まえて判断することが重要」と語る。
 「本学では、全国の高校に継続的にヒアリングを行いながら、入試問題の作成を行ってきました。そうした中で強く感じたのは、英語のリスニングに関しては、地域・学校によって取り組みの温度差が大きいということです。ALTの加配状況や授業時数などにもかなりの差が見られる状況でリスニングを過度に重視することは、ともすれば一部の学校の生徒のみを優遇することにもつながりかねません。あくまでも高校の状況を見据えた上での対応を考えていきたいと思います」
 こうした判断の背景には、社会に占める同大のポジションに対する次のような認識がある。
 「本学は全国の幅広い地域から入学者を受け入れていますが、特に地方部の公立進学校出身の学生たちを多く受け入れています。彼らの向学心に見合った教育をどのように提供していくのかは、本学に課された重要な使命だと認識しています。だからこそ、全国の高校現場の状況を調査し、公平な環境で入試を行わなければならないと考えています。本学の社会的存在意義や個性をより強めていくにはどのような入試が求められるのか、アドミッションポリシーに照らし、慎重に検討していきたいと考えています」(鈴木教授)
 
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