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1 ミキシング効果の有効活用
学生・教員の相互乗り入れを可能にする組織の整備
大学の再編・統合による大きな変化の一つは、言うまでもなく、専門分野や資質の異なる学生が同じキャンパスで学ぶようになるということだ。しかし、単にキャンパスを共有しただけでは、「場を共有した」だけにすぎない。教育効果や人的資源を真の意味で共有するには、従来の教育組織の在り方を見直すことが不可欠である。九州大の場合は、統合に先立つ00年より「学府・研究院制度」を導入し、教育・研究組織の大幅な改組が図られた。
「学府・研究院制度の最大の特色は、教育組織と研究組織の関係を根本から見直したことです。これにより異なる専門領域を横断した研究や、学部の枠に捕らわれない教育組織の新設が柔軟に行えるようになったのです」(中野副学長)
図2
に「学府・研究院制度」の概念図を示した。
その最大の特徴は、学部生が所属する「学部」と大学院生が所属する「学府」、そして教員の所属する「研究院」を完全に分離したことだ。これにより、教育組織と研究組織の関係が明確に整理され、各教員が複数の学部や学府で講義を行うことが保障されたのである。
「この制度が導入されたことにより、専門領域を越えた科目履修が行われるようになったことは大きな成果だと考えています。例えば、生命工学を学ぼうと、システム生命科学府に進学した大学院生は、医学、工学、農学など他の7つの研究院の教員から講義を受けることができるのです。もちろん、それは学部所属の学生にとっても同様です。九州芸術工科大出身の教員が所属する芸術工学研究院の授業は、芸術工学部や工学部の学生はもちろん、文学部や法学部の学生も履修できるのです」
また、各研究院にどの教員が所属するかなど、人員配置の面でも柔軟な対応が保障されていると中野副学長は言う。
「旧九州芸術工科大の教員は、現在のところ全員が芸術工学研究院の所属となっています。しかし、今後のカリキュラム整備や研究領域の変化に応じて、その配置は柔軟に見直していく予定です。例えば、工学研究院の教員と所属を入れ替えたりすることがあるかも知れません。この点は、教員が研究を進める上でも、大きな刺激になるのではないでしょうか」
人材配置の最初の見直しは04年度中に予定されている。それ以降も5年ごとに、教員配置はもちろん、研究組織の存続そのものも含めた見直しが図られていく予定だという。異なる専門領域・資質を持った学生・教員のミキシング効果を永続化させる仕掛けが、ここには既に組み込まれている。
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