ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
再編・統合を機に進む教育・研究体制の大改革
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2 カリキュラムの見直し
低学年次の教養教育の再編が進む
 制度上で学部横断的な科目履修を保障する一方で、履修体系全体に目を向けたカリキュラム改革も進行中である。現在、同大では1・2年次に20単位前後の科目を、学部枠に縛られることなく履修できるが、05年度に向けて、さらにこの制度を発展させる議論がスタートしているのだ。カリキュラム改革に向けた議論をリードしている野澤秀樹副学長は、その背景を次のように説明する。
 「学部の枠を越えた科目履修を認める『総合選択履修方式』は、99年度より導入しました。学部・学科はもちろん、文系・理系の枠も取り払った科目履修を認めることで、幅広い教養と知識を身に付けた学生を育てたかったからです。今回の統合を受けて、例えば、旧九州大の学生は今まではなかった芸術工学に関する授業が履修可能になります。学生たちがうまくこれらの科目を履修してくれれば、これまで以上に知的バックボーンを広げることができるでしょう。しかし、実際には、カリキュラム編成の都合上、自分の専攻分野に近い科目ばかりを履修する学生が少なくないのが現状です。したがって、今後のカリキュラム改革に当たっては、履修枠の拡大はもちろん、制度本来の目的をより明確に学生に伝えられるようなシステムの構築が不可欠だと考えています」
 具体的に学内で検討されているのは、99年度より設置された「少人数ゼミ」と呼ばれる科目群の拡充である。これは1年次の学生が学部の枠を越えて履修可能なゼミであり、年間2コマまで履修することができる。担当教員は各研究院の専任教員が務め、最先端の研究成果を学生たちに教えていく。1年次のうちから複数の専門領域に触れさせることで、幅広い学問領域への知的好奇心を養うのがねらいだ。
 「現在、『少人数ゼミ』の開講数は108コマですが、まだ全学生が履修できるだけの数には足りていません。05年度に向けて、これを全員に必修化できるよう学内調整を行っています。もしそれが実現すれば、芸術的な感性教育も含めた教養教育が行えるようになるのではと期待しています」(野澤副学長)
 また、芸術系科目の導入を踏まえ、同大ではさらに、各授業相互の整合性を含めたカリキュラムの調整を05年度に向けて行う予定だという。
 「例えば、旧九州芸術工科大では『技術の人間化』というキーワードを次世代の研究テーマとして掲げています。今回の統合を受けて、このテーマは本学の工学部等にとっても大きなメリットとなるでしょう。工学系の学生に芸術系の授業の履修を義務付けるようなカリキュラム改革も、検討次第によっては現実味を帯びてくるのではないでしょうか。また、他の専門領域においても芸術的感性を持った自然科学研究者、あるいは芸術的感性を持った社会科学者などが輩出するようになるのではないかと期待しています」(野澤副学長)
 
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